―吉田稔麿―

6/17
前へ
/592ページ
次へ
初めて吉田様と会ってから二週間、特に変わったこともなく、普通に過ごしていた。 いや…一つ変わったことがある。それは、吉田様と普通に会話するようになったこと。最初は警戒していたけど、あの性格では三日もたてば、普通に話すようになっていた。 ポン ゆ「!?」 肩をいきなり叩かれて、考え事をしていて後ろの気配に気付かなかったゆきこは隠していた手のひらサイズの小太刀を出した。 空「ゆきこ!大丈夫?」 ゆ「あ…空。うん、大丈夫だよ」 なんだ空か… ホッとしたゆきこは、小太刀を閉まった。 ゆ「どうしたの?」 空「どうしたの、じゃないよ!さっきからずっと呼んでるのに気付いてくれないんだもん…」 ゆ「え?あ、ごめん…」 そうだったんだ…駄目だなぁ…何だか今日はボー…っとする…疲れてるのかな? 空「大丈夫?」 ゆ「平気だよ。ごめんね?」 空「ならいいけど…無理しないでよ?」 ゆ「うん」 空は笑顔で頷いて注文を取りに行った。私も、ちゃんと仕事しないと! そう思って一歩踏み出したとき、視界がグニャリと歪んだ。 なんとか、踏ん張って頭を抑えた。 やっぱり疲れてるのかな? 「すいませーん」 ゆ「はーい」 これからもっと忙しい時間帯なんだからしっかりしないと! 暫くすると、だんだん落ち着いてきた。ふぅっと一息ついた時、長い髪を揺らしながら総司さんが入ってきた。 ゆ「総司さん!いらっしゃいませ!…ぁ」 駆け寄っていこうと一歩踏み出したとき身体から力が抜けて膝が崩れて目の前が歪んだ。そして、私はそのまま意識を失った。 最後に感じたのは、倒れる直前に暖かく力強い、良く知った温もりに包まれたということだけだった。 .
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1416人が本棚に入れています
本棚に追加