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総司に抱えられたゆきこは隊士が集まっている部屋に来た。
「先に俺達が入るから、呼んだら入って来なさい」
そう言って、近藤と土方は襖を開けて、ガヤガヤと騒がしい部屋に入って行った。
少ししてから、『入ってきなさい』と声が掛けられて、総司が足を進めた。
部屋に入ると、先程まで騒がしかった部屋がシン…と静かになったゆきこは居心地の悪そうに総司の着物を握り締めた。
「ゆきこ、自己紹介を…」
総司にそっと降ろして貰い、ふらつく身体を支えてもらい、ゆきこは何とか立っていられた。
「朱里 ゆきこといいます。今はまだ働けませんが、動ける様になったら女中として働いていくつもりですので、迷惑を掛けると思いますが、よろしくお願いします」
少しの間、シン…としてたけど、すぐに拍手が起きた。隊士たちの表情に拒絶の色は見えなかった。
「彼女は今、ある事情により怪我をしているが、みんな仲良くしてくれ。
じゃあゆきこ、もう部屋に戻って体を休めなさい」
「あ、はい」
総司は、ゆきこの背中と膝の裏に手を回してまた抱きかかえた。近藤のこれ以上、ゆきこの身体に負担を掛けるわけにはいけない。という配慮が嬉しかった。
「それじゃあお先です」
そう言って総司は襖を開けて、広間から出た。そして、先程までいた部屋に戻った。
「部屋は私と同じですが、大丈夫ですか?」
「はい…沖田さんは、いいんですか?」
「大丈夫ですよ?とりあえず、私の布団しかないので待ってて貰えますか?すぐに持って来ますので」
「あ…すいません」
「いいえ、ではすぐに持って来ます」
「はい。ありがとうございます」
そう言って、総司はゆきこの頭を一撫でして部屋から出て行った。他の人とは違う総司に戸惑いが隠せなかった。
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