―吉田稔麿―

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頬に当てられている手は冷たくて気持ちいい、その手を両手で包む。あぁ、やっぱりこの手は落ち着く。包んでいた手はいつの間にか逆に包み込まれていた。 そして、顔が近づいて額と額がくっついた。 総「熱くなってきましたね…」 ゆ「駄目です…移っちゃいます…」 虚ろな目に真っ赤になった頬、そして荒い息遣いを見れば、どれだけ辛いのかくらい想像がつく。 よく今まで隠しきれたものだ… ふと、外を見ればもう日が暮れてきていた。 まぁ、いいか…後で文でも送っておこう。 ゆ「総司、さん…」 総「はい?」 ゆ「その…身体を…」 総「…?」 赤い顔を更に赤らめてもじもじしているゆきこに総司は首を傾げた。 ゆ「身体を…拭きたいのですが…」 総「………あ、えと…」 ゆ「背中だけでいいんです!お願いします!」 我慢出来なかった。こんな汗をかいた身体でこの人の傍にいるのは。 でも…迷惑だろうか? ジッと、見つめていれば総司は諦めたように笑った。 総「分かりました」 ゆ「ありがとうございます!」 ゆきこは総司に背を向けて上体だけ起き上がった。そして浴衣の袷を広げた。 ん?浴衣…? ゆきこは首だけ後ろに振り返った。 ゆ「あの…総司さん」 総「はい?」 ゆ「私、いつ着替えましたか?」 総「あぁ…空さんがやってくれましたよ」 ゆ「そうですか!」 ゆきこは安心したように笑った。 良かった…総司さんじゃなかった… 浴衣の袷を広げて背中を出して、前は掛布で隠した。 総「じゃあ拭きますね?」 ゆ「はい」 総司は小さな背中を濡らした布で丁寧に拭いていく。 冷たくて気持ちいい…でも、恥ずかしい… 総「痛くないですか?」 ゆ「あ…はい。大丈夫です」 平然としているようだが、総司も内心危うかった。 いくら、頼まれたからといって好きな少女の背中を拭いてて理性が危うくないわけなかった。 汗で張り付いてしる髪も、上気している肌も全部が少女を女性のような色気を出しているように感じた。 .
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