―吉田稔麿―

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いつもこの少女は無理をする。 先程見えた腹の傷も少しずつ治ってきたが、この傷跡が消えることは無いだろう。普通に生きていたらこんな傷が出来ることは無かった。 此処に戻って来なければこんなこの傷は出来なかった。 此処に戻って来ないで、ゆきこが元々いた時代に居れば、斬られることなんか無かった。 だが、本当は分かっていた。 ゆきこがこの時代に戻ってきた理由は自分にもあるということを… 自分が居たからゆきこは戻ってきた。自意識過剰かもしれないが、実際そうなのだ。 総「あなたは…それで良かったのですか?」 頬に張り付いている髪の毛を払う。 やっぱり、一緒に居た方が良かったのかもしれないのか… 確かにゆきこの為を考えたつもりだった。が、その分ゆきこが危険な目に遭うのが増えている気がする… 頬に手を伸ばそうとした時、すぐ後ろに気配がして振り返った。 総「山崎さん…」 「沖田くん。副長が角だして待ってるよ?」 総「…了解です。直ぐに戻ると伝えて下さい。あと、そんなに気になるならご自分で見に来たらいかがですか?と、伝えて下さい」 「ぶふ!りょーかい」 それだけ言うと、姿を消した。 全く…あの人は相変わらず心配性だな。 総司に戻るように足しておきながら、実はゆきこの様子を確認したかったんだと、総司は気付いていた。 総「さて、と…帰りますか…」 お願いですから無理しないで下さい… その思いが伝わりますようにと、手の甲に口付けを落として部屋を出た。 .
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