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ゆ「んっ……おいしい…」
もぐもぐと、美味しそうに食べていくゆきこを見て、稔麿も自然と笑顔になった。
本当に面白い子だ…
初めて会ったときは警戒心丸出しだったのに、三日も経てばその警戒心は消えていた。全てではないが…
今でも、一定の距離以上は消えていない。だがそれは無意識なモノだった。今一番気になっている対象はゆきこという不思議な少女だ。
稔「はい。これが最後」
ゆ「ん…ご馳走。ありがとう?」
稔「いーえ。ほら、もう寝なよ」
空になったお椀を置いて、ゆきこを寝かせようとしたが、ゆきこはそれを拒んだ。
ゆ「食べてすぐ寝ると太るの」
稔「だったら、ゆきこはもっと太るべきだよ?」
その場に総司がいたら、即座に頷いただろう。確かにゆきこは細かった。元々そういう体質なのだ。
ゆ「?とにかく、何か話そうよ?」
稔「熱上がっちゃうよ?」
ゆ「…大丈夫」
譲りそうにないゆきこに軽いため息をついて諦めた。この少女の意志の強さは短い期間でもよく分かっていた。
稔「分かったよ。でも、キツそうだったら寝かせるからね?」
ゆ「うん!」
稔「じゃあ薬飲んで」
お盆の上に乗っていた薬と水をゆきこに差し出すと、渋々受け取った。
薬を飲み込むと一気に流し込んだ。
ゆ「うぇ…苦い」
稔「我慢ガマン。
それで?何を話すの?」
傍に置いてあった羽織りをゆきこの小さな肩に乗せて、顔に掻いた汗を手拭いで拭いた。
ゆ「んー…稔麿について知りたい…」
稔「僕?…いいよ。教えてあげる」
それは、ゆきこが警戒心を解いた瞬間であり、稔麿が一歩踏み出した瞬間だった。
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