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深い眠りから、ふと頬を撫でる冷たい風の感覚に目が覚めた。
数回瞬きをすると、意識がハッキリしてくる。
あれ…?わたし確か稔麿に…
横を見ると、稔麿が座ったまま眠っていた。
無防備な顔で眠ってるなぁ
起き上がって、稔麿の頬をツンツンしてみると、ゆっくりと目蓋を開けた。
虚ろな目でゆきこの姿を捉えると、フニャリと微笑んだ。
それを見たゆきこは少し驚いた。
まさか、こんな笑顔を見せてくれるなんて…
稔「おはようゆきこ。身体の調子はどう?」
ゆ「ん?大分、楽になったよ。ありがとう」
身体が大分軽くなった気がする。やっぱり薬飲んだからかな?
横に置いてあった手拭いで汗を拭く。
ゆ「んー…って、稔麿帰らなくて平気なの!?」
寝たときはまだ、明るかった筈がもう薄暗くなっていた。どれだけ寝ていたの!?
稔麿も、あぁ…と頷いて立ち上がった。そして、座っているゆきこの髪を撫でて部屋を出て行った。稔麿を見送っていた笑顔は、稔麿が部屋を出て行った瞬間に消えた。
ゆ「…何でいっつも誰かに頼っちゃうんだろう…」
ポツリと呟いたその言葉は、静かに部屋に響いた。
稔麿が出て行った静かな部屋で、ゆきこはぼー…と外を見ていた。
私がこの時代に居る意味ってあるのかな?
何で私はこの時代に来たんだろう…
ゆ「そう…じ…さん…会いたい…」
昨日会ったばっかりだというのに、会いたくて仕方ない。
この真っ黒い不安の塊を取り除いて欲しい。
駄目…頼っちゃだめ…
なのに、会いたい…助けて…胸が締め付けられる…
…総司さん…
ふと、名前を呼ばれた気がして振り返った。
だが、振り返って隊士達に聞いてみたが、誰も読んでいないと言う。
あの少女が、泣いている気がする。頼むから一人で抱え込まないで欲しい。無理しないで欲しい。
寂しいなら、悲しいなら呼んでくれ…
すぐに傍に行くから。
巡察が終わったら行ってみるか…
そう決意して総司は先程よりま真剣に巡察を開始した。
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