1416人が本棚に入れています
本棚に追加
頬に流れる涙を指で掬っても止まることを知らぬように零れ落ちてくる。
ゆ「総司、さん…今まで…本当に…迷惑かけて…ごめん、なさい…
もう…大丈夫ですよ。私なんかに、気を遣わないで…大丈夫です。もう、私に…関わらないで下さい…
どこまでも勝手ですいません…」
そう言った瞬間、視界が反転して天井が見えた。状況を判断するのに少し時間が掛かった。
サラサラな長い髪が頬を掠めてくすぐったい。私は総司さんに押し倒されていた。
総「…それが、あなたの本心ですか?」
そんな目で見ないで、そんな声で聞かないで…折角決めた決意が緩んで消えてしまうから…
ゆ「はい…これが、私の…」
言わないと…
これ以上迷惑かけないって決めたでしょ?沢山の優しさ愛情、幸せな初めてをいっぱいくれたこの人にこれ以上迷惑掛けないって。
この人は、私なんかに構っていなければすぐに良い人が来る。
ゆ「本、心…です…」
あぁ…胸が痛い、嫌だ…こんなの本心じゃない…
もっと一緒に居たい。
隣に居て欲しい
笑って欲しい
髪を撫でて欲しい
抱き締めて欲しい
もっと…
もっと…
気持ちが溢れて涙と一緒に出て行く。
ゆ「総司さん」
嫌…
総司さん…
気持ちとは反対に言葉が口から零れていく。
ゆ「さようなっ…!?」
言葉の途中でキツく抱き締められた。
大好きです。総司さん。このままトキが止まったらどんなに幸せか…
ゆ「はなして…下さい…」
耳元で息を呑む音が聞こえた気がした。
もう、これ以上一緒に居られない。腕に力を入れようとした時、
スッ…
総「さようなら。ゆきこ」
ゆ「っ…」
止める暇もなく総司は立ち上がり部屋を出て行こうとした、思わず手を伸ばそうとしたが我に返って手を引っ込めた。
襖に手を掛けた時、総司が振り返って弱々しく笑った。
総「私は、ゆきこに迷惑を掛けられたことは無いと思っていました。そして…離れようとも思っていませんでした。
さようなら。ゆきこ」
やだ…そんな風に笑わないで…
そんな顔させたかったわけじゃない…
総司が部屋を出て襖を閉めた瞬間、ゆきこは泣き崩れた。
初めて会った時、身元も分からない私を笑顔で迎え入れてくれた。手を握って慰めてくれた。優しく抱き締めてくれた。
私が…傷つけた
あの優しい人を
あぁ…やっぱり私は
幸せになっちゃいけないんだ…
.
最初のコメントを投稿しよう!