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暫く痛む身体に負担を掛けないように大人しくしていると、部屋の襖が開き誰かが入ってきた。三人組の男の人達だった。
「あ、の…?」
「ゆきこちゃん!…だよな?大丈夫か?」
「あ…はい」
いくら新選組の人でも、男の人は怖い…。なるべく明るい声を出したが、恐怖が身体中を駆け回り、無意識のうちに布団を握り締めていた。
「俺は、原田左之助よろしくな!」
原田さんは、一番大きくて格好良かった。男らしいって言葉がよく似合いそう。
「俺は永倉新八っていうんだ!」
永倉さんは、筋肉ムキムキで…まさに熱血漢みたいな感じ。でも、兄貴肌という雰囲気が滲み出ていた。
「俺、藤堂平助っていうの。よろしく」
藤堂さんは、まだ子供っぽさが残っているやんちゃ坊主みたいな印象を受けた。
「ん?どーしたのゆきこちゃん。顔色悪いよ?」
左之が心配そうに顔を覗き込んだ。ゆきこは身体を少しだけ震わせたが、笑顔を浮かべた。
「…はい…大丈夫です」
笑顔が引きつりそうになるのを必死にこらえたが、恐怖で身体が動かなくなりそうだった。
「新八、お前のせいだろ?」
「はっ!?てめぇらも同罪だってんだよ!!」
目をギュッと瞑った瞬間、あの時の光景が蘇った。目の前が真っ暗になり、闇に落ちる瞬間―――
部屋の襖が開いた。
見ると総司が布団を抱えて入ってきた。ゆきこはぼやける視界を晴らそうと瞬きを繰り返した。
総司は左之達を見ると驚いた表情をして、ゆきこの方を見ると何を思ったのか、布団を置いて近寄って来た。
「原田さん達…何やってるんですかっ!?」
「なにって…ゆきこちゃんのお見舞いだよ。なぁ?」
「おぉよ」
「ああ」
「そんなことどうでもいいんですよ!?さっさとゆきこさんから離れて下さい。ゆきこさんは怪我人ですよ!?」
総司が鬼のような形相で詰め寄ると、左之達は顔を引きつらせた。ゆきこの怪我の具合を考えれば、普通は来てはいけないと分かる筈なのに、と総司は心の中で舌打ちをした。
「わ、悪かったな。またなゆきこちゃん」
「早く、部屋から出て行って下さい」
総司がそう言うと、三人は名残惜しげに部屋から出て行った。三人が出て行ったのを確認したゆきこは、ホッと息をついた。
「…ありがとうございます」
「いえ。来るのが遅れてしまってすいません…大丈夫ですか?」
弱々しい笑顔を浮かべたゆきこは、動かしたくない程重たい身体から力を抜いた。
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