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話し終わった部屋には沈黙が続いていた。稔麿でさえ何時もの笑顔を引っ込めて真剣な表情をしていた。ゆきこを知っていた稔麿でさえそんな顔をしているのだ。
ゆ「あの…信じられませんよね?」
信じられるわけない。いきなりこんな話しをされて…
顔を下に向けると、頭に暖かい温もりが加わった。
稔「僕は信じるよ?だってゆきこが本当だって言ったんだから」
ゆ「と、し…麿…」
にっこりと微笑んでいる稔麿にホッとした。信じてもらえると思っていなかったから…
ふと、晋作の方を見ると煙管をふかしていた。
晋「てめぇの話しは嘘くせぇが、まぁ信じてやるよ」
ゆ「…あ…ありがとうございますっ」
晋作に笑い掛けると、照れくさそうにそっぽを向いて髪をかいた。
首を傾げると耳元で小さく、照れてるんだよ。と耳打ちしてきた。
稔「改めてこれからよろしくね、ゆきこ?」
ゆ「うん!」
今日から、私の居場所は此処になった。
晋「ゆきこ」
ゆ「なんですか?」
晋「お前、男装しておけよ?」
ゆ「え?」
ちなみに稔麿は、ゆきこの肩に頭を乗せ眠っている最中だ。此処に来てすぐに発見したのは、稔麿が意外と甘えん坊だっていうこと。
晋「お前は新選組の奴らと仲良いんだろ?だったら姿を変えておけよ。
ずっと、この宿屋の中で生活するわけじゃねぇだろ?」
あぁ…そういう意味か。でも、私何も持ってないし…やっぱり一回戻るべきだったかな?
ゆ「でも私、袴とか持ってませんよ?」
そう言うと、任せとけと言って手を叩いた。すると、晋作の真後ろに忍装束を来た二人が現れた。
晋「珀と沙羅だ。おい、コイツに合う男用の袴と鬘を持ってきてくれ。あと…ゆきこ、刀持ってるか?」
ゆ「あ…陽向屋に起きっぱなしです…」
晋「じゃあ、陽向屋にあるゆきこの着物と刀も持ってこい」
忍の二人は、頷いて姿を消してしまった。
暫くすると、二人は言われた物を揃えて戻ってきた。
ゆ「桜舞…良かった…」
晋「…ゆきこ、この中から選べ」
床には、晋作が言っていた物が沢山並べられていた。
ちなみに稔麿は壁に寄りかかって寝ていた。
ゆ「この中からですか?」
晋「あぁ」
って言われても…
下に視線を戻して軽く溜め息をついた。
長い鬘から短いものまで、色んな鬘があった。袴もまた然り。
今日中に選べるかな?
本気でそう思ったゆきこであった。
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