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晋「試しに町でも行ってみたらどうだ?」
ゆ「町ですか…いいですね!稔麿、行こ?」
笑顔で問い掛けると、稔麿はまだ不機嫌そうながらも軽く頷いた。
パァっと顔を明るくさせて稔麿の手を引いて部屋を出たゆきこと稔麿。
部屋に残された晋作は静かに自分の後ろに控えている忍に告げた。
晋「ゆきこの素性を調べろ。それと、ゆきこと稔麿がどうやって出会ったのか…」
その言葉に頷いて二人の忍は姿を消した。
一方、宿屋から出た二人は町を歩いていた。着てみると女物の着物より袴の方が動きやすかった。
稔麿は、ゆきこの半歩後ろを歩きながら周りを見渡した。
気付いていないようだが、かなり見られていた。と言っても殆どが女人だが、中には男でもゆきこに見入っている奴もいた。まさか女人ですなんて言っても絶対に信じられないだろう。
ゆ「とし、…じゃなかった栄太郎!お団子食べていこ!」
なんでみんな気づかないんだろう…
あの笑顔はどう考えても少女のモノだ。
流石に男同士が手を繋ぐわけにはいかないので、隣に並んで甘味処に入った。
向かい合わせに座って適当に甘味を頼んだ。
ゆ「それにしても、男装って以外と面白いね」
稔「…それは何よりだよ」
その時、丁度お団子が運ばれてきた。
運んできた女人は美男子の二人を見て顔を赤くした。ゆきこは熱でもあるのかなぁ…と気にするわけでもなく見ていた。
ゆ「ありがとう。…ん、美味しい!」
稔「うん。美味しい」
ゆ「お土産買っていこうか!」
どれにしようか…と、お品書きを眺めているゆきこを見ていると自然と頬が緩む。と、その時…
「いらっしゃいませー」
カラン…
ゆきこの手からオサジが滑り落ちた。
背中に嫌な汗が伝った。助けを求めて稔麿を見たが、面白そうに笑っていただけ。なんで…なんで…
「総司。此処か?お前が来たいと行っていたのは…?」
総「はい。いやぁ、一人で来るのは寂しいので」
そう、入ってきたのは総司と一、という珍しい面子だった。
お願いだから傍に来ないで…というゆきこの願いとは裏腹に総司達はゆきこ達の隣に座った。
総「此処のお団子美味しいって評判なんですよ」
赤の他人にこれだけ殺意が湧いたの久しぶりだ。何も知らない店員が本当に恨めしく思った。
負のオーラを漂わせているゆきこに稔麿は笑いをこらえるのに必死だった。自分が男装していると忘れているゆきこだった。
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