―敵側―

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稔「他にも美味しい店はあるから、そこに行こ?」 ゆ「…うん。そうだね」 稔「こっちだよ。美味しい甘味処があるから」 手を掴もうとしたが、ゆきこが男装しているのを思い出して仕方なく肩に手を置こうとした時、 ドンッとゆきこが稔麿を突き飛ばして細い道に押し込んだ。すぐに自分も細い道に入り込んだ。 この間僅か三秒。 稔「いっつぅ…何なのゆきこ?」 ゆ「しー…」 稔麿の口に手を当てて後ろを伺うゆきこの向こうを見ると、 稔「あぁ…空ちゃんね」 微かに見えただけだったが、心なしか落ち込んでいるように見えた。 空が見えなくなるとゆきこはホッとして口から手を離した。 稔「よく気付いたね」 ゆ「まぁね。いきなり突き飛ばしちゃってごめんぬ?」 もぞもぞと体を捻って抜け出し、キョロキョロと辺りを見回してからやっと安心したように微笑んだ。 ゆ「やっぱり、男装してても不安だね」 稔「なら、さっさとお土産でも買って帰ろうか」 ゆ「だね?」 今度こそ、二人はお土産を買うために歩きだした。 お土産を買って、宿屋の扉を開けた瞬間… ゆ「…やっぱり…ですか」 ゆきこの首筋にはクナイが当てられて、あと少しでも動けばゆきこの首の皮膚は切れてしまうだろう。 チラリと稔麿を見たが分かっていたみたいで何も言わずに口を閉ざしていた。思いっきり眉間に皺を寄せていたが。 ゆ「さて、高杉さん。私のことを調べましたね?」 それは確信にも似た問い掛け。奥から晋作が現れてふー…と、煙管をふかした。 次いで、忍にクナイを突きつけられて動かないゆきこの前まで移動した。 晋「てめぇ、本当に何者だ」 ゆ「先程お話したじゃないですか」 晋「あんな話し…」 ゆ「信じられるわけない。…ですか?」 話しを途中で遮られて自分が言う言葉をそのまま言われ眉間に皺を寄せた瞬間、ゆきこが動いた。 クナイを突きつけていた忍の手首を掴み背後に周り、床に押し倒してクナイを奪い忍の首筋に突きつけ、あと少し動けば骨が折れるように腕を掴んだ。懐から手のひらサイズの小太刀を取り出してゆきこの行動に驚いて攻撃しようした忍のクナイを持つ手に向かって小太刀を投げつけた。 投げられた小太刀は手をかすった。そのまま間髪入れずに忍の顔すれすれに小太刀を投げつけた。 動けば次は外さないという意味を込めて忍を睨みつけた。 .
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