―敵側―

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桂「げほっ…お茶を!」 稔「あれ?ゆきこまた腕磨いた?美味しくなってる」 ゆ「そうかな…?」 最早、苦しんでいる小五郎は無視である。最初は憐れみの視線を送っていたが、もう心配するだけ無駄だと悟った。 桂「お茶…ふぐぐ…」 晋「たく…うるせーな。ほらよ」 いい加減煩わしくなった晋作は今度はお茶を流し込んだ。 あ、そのお茶は… 桂「あっつ!?げほっあちちちちっ」 晋「……」 晋作は黙って、二本目のお団子に手を伸ばした。 未だに喉を押さえてうずくまっている小五郎に捨てられた子犬のような顔で見つめられたゆきこは、一応聞いてみた。 ゆ「…大丈夫、ですか?」 桂「舌がヒリヒリする…」 ゆ「そうですか。大丈夫ですか。それは何よりです」 そのまま無視しようと思ったが、ゆきこは元々人が良いためこういうのは見捨てておけないのだ。 ゆ「今、冷たい水を持ってくるので待っていて下さい」 桂「ありがとう!」 パァ…と、顔を明るくさせた小五郎を見ると苦笑いしか出来なかった。 ついでにお茶を淹れてこよう。と、お盆に空の茶器を乗せて部屋を出た。 あの人達を見てると、あの場所を思い出す… 目を閉じればあの人達の笑顔が浮かんでくる。 ゆ「駄目だなぁ…もっと強くならなきゃいけないのに…」 震えている自分の腕を見ると自嘲するように口端が上がる。どれだけあの人達に頼るつもりだ… 私はあの人達を裏切った。違う、傷つきたくなくて、否定されたくなくて逃げたんだ。 もっと… ゆ「もっと、強く…」 強く、なりたい… ゆ「遅くなりました~」 熱いお茶を淹れなおして冷たい水を持って部屋へ戻った。 襖を開けると… ヒュッ ゆきこの顔目掛けて何かが飛んできた。 この展開、前にもあった気がする… だけど、この前と違うのはゆきこの力を図るために投げられたモノではないということ。 この前のようにそれを掴むと、それは団子の串だった。 誰が投げているのかと、部屋を見れば… ゆ「桂さん?」 稔「あ、ゆきこお帰り」 ゆ「ただいま。何この状況?」 晋「知るか。小五郎がいきなり暴れ出したんだ…っと危ね」 絶対、あんたらのせいでしょ…そう言おうと思ったが、とりあえず今は小五郎を止めるのがさき… と、懸命な判断をしたゆきこは辺りを見回した。 そうしている間も、串はどんどん飛んできて畳に刺さっていく。 .
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