―決意―

4/10

1416人が本棚に入れています
本棚に追加
/592ページ
ゆ「あの…沖田さん?」 総「…ゆきこでは無いのですか?」 ゆ「っ…違いますよ。ゆきこという御方ではありません」 そんな顔しないで下さい。 私があなたを傷つけたのに、何故あなたは私を探すんですか? 人が良すぎますよ?もう、私に関わらないでいいですよ… 自分の大切な人達のために生きて下さい。私に割いている時間はないでしょう? だから、もう私を探さないでいいです。 総「そう、ですか…すいません」 ゆ「いえ、ではこれで」 掴んでいる腕をそっと離してゆきこは今度こそ総司の前を通り過ぎた。 ゆきこの瞳にはハッキリと決意の色が灯っていた。 残された総司は離された自分の手をジッと見つめていた。 まだ、ゆきこに掴まれた手の温もりが残っている。 男にしては小さい手は、自分の知ってる少女の手と同じなのに… 総「どこへ行ってしまったのですか…?」 菖蒲と空が慌てて新選組の屯所に来たのは約一週間前。 突然ゆきこが居なくなったらしい。此処に居るんじゃないかと来てみたらしい。 悪い予感が頭をよぎった。 自分を突き放して、もう大丈夫だと言った少女の泣き顔が浮かんでくる。 総「あなたは、もう一人で大丈夫なのですか…?」 私は…あなたが居ないと全てが色褪せて見えますよ? 傍に居なくても、自分を嫌いになってもいい、だから… 総「どうか…笑っていて下さい…泣かないで下さい…」 自分が愛した少女が笑っていてくれたらいい。 ゆきこ… 賑やかな遊郭の廊下でその呟きだけが静かに響いた。 稔「あ、ゆきこお帰り」 ゆ「ただいま」 自分はもう、此処に居ると決めた。一人になった自分に手を差し出してくれた… なんでみんな優しいんだろう? 私はみんなの優しさを貰えるような人間じゃない…弱くて、すぐ逃げ出して、誰かに頼ってばっかりで… それなのに… 自分の席に戻って、今度は先程より甘めなお酒を貰った。 うん。このくらいなら飲めるかも… 「何かありましたか?」 流石。長年遊女をやってきて人の感情や表情に敏感なっている彼女は気付いてしまう。 ゆ「…少し、自分が嫌になりまして…」 「あなた様は良い御方ですわ…姫緒はそう思います」 ゆ「ありがとう」 .
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1416人が本棚に入れています
本棚に追加