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ゆ「決めたんだもん…後悔しないって」
稔「そっか…」
ゆきこは稔麿の胸元に寄りかかった。
ふんわりと癖がついている髪は触り心地がよくて柔らかかった。
ふわりと甘い匂いが鼻を掠めた。少女からはキツ過ぎない匂いが香ってくる。
誘われるように少女を抱き締める。どうしてこの少女はこんなに柔らかいのだろうか?キツく抱き締めたら折れてしまいそうだ。
稔「じゃあ、ゆきこはこれで僕たちのモノ?」
ゆ「…うん。私は稔麿達のモノだよ?」
稔「逃がしてあげられないから…」
ようやく、此方側に来た少女は心も体も疲れきっていた。それはまるで渡り蝶のように…
羽をすり減らし、途中で死んでしまうかもしれない。それでも目的の地に着くまで飛び続ける。
生まれた時から、地図も何もないのに蝶は飛び続ける。
もう、休ませてもいいんじゃないだろうか?
新選組と稔麿達の間で揺り動きながら、心をすり減らしボロボロになって、ようやく休む場所を見つけた。
否、休む場所ではない。余計にゆきこの心を削っていくことになる場所だ、そしてまた傷つきながら蝶は飛んでいく。
自分を休ませることを知らず、ただ自分を責め続け、ゆきこはもう疲れていた。
一時でいい、休む時間が欲しかった。
稔「もう、休んでいいんだよ…?」
それを聞いたゆきこは安心したように微笑んだ。
この言葉を、心のどこかで待っていたのかもしれない。
蝶のようで、桜のように散っていく。ゆきこの人生はそうして散っていくのではないかと思う。
桜のように、咲いたと思ったらすぐに散っていってしまう。そんな風にゆきこが居なくなってしまう気がしてならない。
稔「ゆきこ…傍にいるから…居なくならないで…」
ゆ「うん…」
そう言わないと、本当に居なくなってしまいそうだ。
もう、休んでいいから。誰にも文句なんて言わないから消えないで…
その笑顔を守りたいんだ…大丈夫だよ。絶対に守ってみせるから…
ねぇ、キミはその小さな体に何を背負っているの?
僕がキミに出来ることは何?どうしたら笑ってくれる?
喜びも悲しみも全部受け止めてあげるから、ヒトリで泣かないで?
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