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「新撰組局長の近藤勇だ。これからよろしく頼むぞ」
「新撰組総長 山南敬助です。よろしくお願いしますね」
「新撰組副長 土方歳三だ」
「一番組組長沖田総司です。よろしくお願いしますね」
「二番組組長 永倉新八だ!!よろしく」
「三番組組長 斎藤一だ」
「六番組組長 井上源三郎だ。よろしく」
「八番組組長 藤堂平助。さっきはごめんな」
「十番組組長 原田佐之助だ。よろしくな」
「新撰組女中の菊よ。よろしくね」
一通り、部屋に居る人が名前を言い終わった。ゆきこは一人一人の名前と顔を確認し、覚えようと頭を回転させた。すると前から視線を感じた。その方向に顔を向けると女中の菊と目が合った。
不思議に思って首を傾げると菊は顔を輝かせて顔をズイッと近づけた。
「あ…あの…?」
「ゆきこちゃん!」
「はいっ?」
「私のことは菊姉って呼んでね?」
「菊…姉…ですか?」
「そーよ!!んもう可愛いんだから」
「あ…ははは…」
乾いた笑いを浮かべながらもゆきこは少し嬉しそうだった。周りの組長達も少し呆れたようにゆきこたちを見ていた。
「あ~~もう可愛いすぎーー!!沖田君!!」
総司は、声を掛けられないと思っていたのか、菊から声を掛けられて少し肩を震わせてから返事をした。
「ゆきこちゃんを頂戴ッ!!」
「駄目です…あ、でもゆきこさんはそっちの方がいいですか?」
困ったように総司に問われてゆきこはふるふると首を横に振った。菊には申し訳ないが、今一番信用出来るのは総司なのだ。
「そう?でもいつまでも待ってるわよ」
名残惜しそうに菊は立ち上がり、仕事があるからと部屋から出て行った。菊が出て行ってから少し間があったが、近藤が口を開いた。
「では、そろそろ戻らないとゆきこの体に影響が出るやもしれん。各自仕事に戻れ」
そう言うと組長達は立ち上がり笑顔で出て行った。部屋には近藤と総司だけが残った。
「近藤さん?」
近藤はさっきの陽気な表情とは違い、深刻な表情をしていた。それを見て、無意識に背筋を伸ばした。
「ゆきこ。なるべくこの部屋から出るな。儂はゆきこを傷つけたくない…」
「え?」
「…とりあえず、今日は此処までにしよう。総司、ゆきこを頼むぞ」
総司が頷くと近藤は誤魔化すように笑ってから部屋を出て行った。部屋にはゆきこと総司が残った。
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