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覚悟を決めて目を瞑った稔麿だったが、痛みがやってこないことを不思議に思い目を開けて、驚いた。
目の前には少し赤みがかった刀が総司の刀を受け止めていた。
稔「ゆ、きこ…?」
ゆ「大丈夫?」
稔「う、ん」
ゆ「この二人を一人で相手にするなんて馬鹿だね?」
総司の刀を弾いて、ゆきこは稔麿のほっぺたを軽くつねった。その表情は少し怒っているようでスッキリしたような、そんな表情だった。
稔「…いひゃい」
ゆ「言ったでしょ?私は稔麿達を選んだって…もう、大丈夫だから。何時までも弱いままの私じゃないから…」
稔「わひゃったよ…」
手を離して総司達に向き合った。一人で相手するのは無理があるけど、二人ならなんとかなるはずだ…
ゆ「手加減はなしでいきます」
総「ゆきこ!?ちょっ…」
斬りかかってきたゆきこの刀を総司はただ受け止めていただけだった。
このままだと無駄だと悟ったゆきこは一度離れて間合いをとった。
ゆ「どうして反撃してこないんですか?」
総「……」
ゆ「私が女だからですか?それとも罪悪感があるからですか?」
総「それは…」
甘い…
土方と斬り合っている稔麿は、二人の会話を聞きながら土方の一撃を交わした。
それより、忘れないで欲しいのは此処はただの遊郭の廊下で決して斬り合いに向いている場所ではない。幸い人通りは少ないが、やはり戦いやすいとは言えなかった。
ゆ「…なら、こう言えばいいですか?
私はあなた達の敵の味方です、と。言い方を変えましょうか?
あなたの大切な近藤さんの敵になったということです」
やっぱり…
総司の瞳から迷いが消えた。いくらゆきこが大切でも、やはり近藤には勝てなかった。その証拠に総司が纏っている雰囲気が変わった。
ゆ「…やっぱり」
近藤さんには勝てないや…何故か胸がモヤモヤした。首を捻って考えたが、なんでかよく分からなかった。
だが、今は総司に集中しなければ少しでも気を逸らせば多分、というか絶対に殺られる。
集中して一度だけ目を閉じた。目に見えるものだけを信じるな、体で感じる。
ゆ「…」
総「…」
二人が同時に動いた瞬間…
ガキンッ!!
ゆ「稔麿…」
総「土方さん…」
ゆきこの刀は稔麿に、総司の刀は土方に止められていた。
稔麿は気を抜いたゆきこの刀を弾き、首に手刀をいれた。
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