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倒れ込んできたゆきこを支えて肩に担いだ。
土方に刀を止められてやっと我に返った総司は自分が何をしようとしたのか思い出して顔を青くした。
稔「ねぇ?これで分かった?キミはゆきこを一番に考えられないじゃん。そんな所にゆきこを預けられない」
総「っ…そ、れは…」
稔麿の正論に、総司は何も言えなかった。言う言葉を見つけることが出来なかった。その隙を見て、稔麿は懐に手を入れて、取ったモノを思いっきり叩きつけた。
辺りには煙が充満した。一気に視界が悪くなり何も見えなくなった。全てが見えなくなる前に、稔麿はその場から立ち去った。
総「ゴホッゴホッ…煙玉…?」
歳「チッ…何も見えねぇ…」
やっと辺りが晴れる頃には、もう二人の姿はなかった。
ただ心の中には、稔麿が言った台詞が残っていた。
自分は確かにゆきこじゃなくて近藤を優先した。それが無意識だったということが、一番総司を苦しめた。
自分はゆきこが大切なのか?それとも近藤が大切なのか…
もし、二人どちらかを選べと言われたら自分はどちらを選ぶのだろうか…
ゆきこが来る前なら他人と近藤を比べるまでもなく、近藤を選んだだろう。
だが、今は…?
一番考えたく無かったことかもしれない。今まで無意識のうちに考えなかった問題を、こんな形で直面するとは思わなかった。
稔「ふぅ…」
遊郭から無事に抜け出した稔麿は裏道を歩いていた。
表通りとは違い、静かで人通りも少なくゆきこを担いで歩いていても、目立つことはなかった。
ゆきこの意識を落として連れてきてしまったが、良かったのだろうか?
確かに総司はゆきこより近藤を選んだ、が…
これで良かったのか…?
稔麿の胸には後悔が渦巻いていた。
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