―判らない心―

2/8

1416人が本棚に入れています
本棚に追加
/592ページ
冷たい肌を突き刺すような殺気が道場を支配していた。 その殺気に隊士達は身を震わせて倒れないように必死だった。 何故そんなに怒っているのか… 道場の中心で、いつもの笑顔を引っ込めて無表情で立っている殺気の原因、総司を見た。 総司はいつもは来ない朝稽古にいきなり現れた。しかも、今までにない程に不機嫌で。 総「全員…俺の前に一列で並びなさい!!」 やっと話したと思ったら何故か私から俺に変わっていた。隊士は総司の気にふれないように急いで並んだ。 総「いいですか?…一人ずつ死ぬ気で掛かってこい!手を抜くつもりはねぇからな」 敬語が消えたーー!? やっと、自分の命の危機に気付いた隊士達は気を引き締めて殺気立つ総司に掛かっていった。 …クソ… 昨日からモヤモヤが取れない… ゆきこと近藤さん…どちらか選ぶなら、俺はどっちを… 分からない… 総「クソッ…」 バンッ 掛かってくる隊士達を一撃で倒していく。 本当に大切なモノはいつも手のひらか零れていく。どうすれば二人を守れるのだろうか… ふと、自分の手に視線を落とした。一瞬、手が血まみれになっているように見えた。 っ…この血塗られた手で何を守れるのだろうか?大事な人たちを守る力なんてあるのか? 攻撃がやんだと思って辺りを見回してみると、周りには隊士達が転がっていた。 また、やってしまった。考え事をしているとどうも加減が出来ない… 「総司」 名を呼ばれて振り返ると土方が道場の入口に腕を組んで呆れ顔で寄り掛かっていた。 歳「お前なぁ…これで何回目だよ」 倒れている隊士達の間を通って総司から少し離れた所で止まった。 ふーっと煙管をふかしてため息をつく土方に総司は竹刀を投げつけた。 歳「危ねっ!…どういうつもりだ?」 総「…防具はいりませよね?少し気晴らしに付き合ってください」 少し複雑な気持ちで転がっている隊士達を見つめた。 ここまで機嫌の悪い総司も久しぶりだな… 歳「仕方ねぇ…いいぜって、おい!?ちょ…いきなりかよっ」 台詞の途中で仕掛けてきた総司の竹刀を煙管を閉まって後ろに下がって避けた。 近くに転がっている竹刀を拾って総司と向き合った。 今更だけど…俺危なくね? .
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1416人が本棚に入れています
本棚に追加