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ゆ「……」
稔「……」
部屋は今までにない程に重い空気が漂っていた。
晋作も小五郎もこの重い空気に冷や汗をかいていた。
この重い空気を発している二人は只今、絶賛喧嘩中。お互いにそっぽ向いて目も合わせようとしない。
きっかけは些細なことだったか、売り言葉に買い言葉で収集がつかなくなってしまったのだ。原因?それは…島原から帰った次の日に起こった。
稔「ねぇ、ゆきこ…」
ゆ「ん?なーに?」
ゆきこは元々、何かしないでいるのが嫌いでお世話になっているんだからと掃除をしたり料理したり洗濯したりと、せっせと働いていた。
今は、洗濯物を干している最中で稔麿は縁側に腰掛けてその様子を見ていた。
ぴょんぴょんと小さく跳ねながら干しているゆきこを見て、昨日の事を思い返していて、無意識のうちに言葉が出ていた。
稔「本当にゆきこはこっち側でいいの?」
ゆ「え?何言ってんの?」
稔「だって…折角新選組の奴らがいたんだから帰っても良かったんじゃん?」
ゆ「…なにそれ」
干していた手を止めてゆきこは振り返った。その顔はまさに不機嫌そうだった。
洗濯物も桶に入れてつかつかと稔麿の前に移動した。
ゆ「どういう意味。稔麿?」
稔「そのまんまの意味だよ。キミはあっち側に居たほうが良かったんじゃない?」
ゆ「…なによ…私が此処にいちゃいけないの…?」
稔「そんなこと言ってないけど?」
ゆ「だってそういう意味じゃん!?」
稔「だから、そういう意味じゃないってば!」
二人の間にはバチバチと不穏な空気が漂う。稔麿は立ち上がって不敵に笑った。ゆきこもそれを見上げて笑った。
稔「分からない子だね。ゆきこ」
ゆ「そっちこそ。認めなよ」
その日は、ゆきこと稔麿が喧嘩したまま過ぎていった。勿論何もなかったわけない。小五郎という犠牲者がでたが。
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