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ゆ「…私、買い物行ってくる」
何時もゆきこが買い物に行く時は必ず稔麿が着いていったが、今は喧嘩中。お互い意地を張って着いて行くとも、着いて来てとも言わなかった。
晋「おっおいゆきこ。沙羅か珀を連れていけよ」
ゆ「大丈夫だよ…」
晋「もう、雪斗もバレてるんだろ?だったら一応連れていけ」
晋作の正論にゆきこは何も言えなかった。確かに雪斗はバレてしまったから、危ないことに変わりない。
ゆ「それなら…他の変装もしてみるとか…」
晋「良いんじゃないか?沙羅、ちょっと鬘持ってこい」
すると、目の前に鬘を持った沙羅が現れた。前の鬘とは違い肩に付くか付かないかの微妙な位置くらいの鬘だった。
それを受け取って、着けてみた。
ゆ「どうですか?」
桂「それも良いな…」
ゆ「じゃあこれにします!珀。着いて来てくれない?」
「いーよ」
珀の名前を出した時、稔麿がピクリと動いたのを晋作は見逃さなかった。
はぁ…コイツも素直じゃねぇな。
珀は武士の格好をしてゆきこの前に姿を現した。
ゆ「じゃ、行こっか!」
「うん」
稔麿の様子にも気付かないゆきこはそそくさと宿屋から出て行ってしまった。
ゆきこが居なくなった部屋はシーンとしていた。
ガツッ…
稔「…ムカつく」
壁には稔麿が投げた小太刀が深々と突き刺さった。丁度、壁に寄りかかって座っていた小五郎の頭の上に…
桂「……と、稔麿、落ち着け」
稔「…晋作、小五郎。行くよ」
晋「行くって…どこに」
稔「二人の後をついて行くんだよ」
そう言って、強引に笠を被せ二人の腕を引っ張って稔麿達はゆきこ達のあとをつけて行った。
なんだかんだ言って、稔麿も晋作も小五郎もゆきこが大切なんだと、三人のあとをつけながら沙羅はそんなことを考えていた。
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