―初めての喧嘩―

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珀「ぅおっ!?どこに行くんだ?」 ゆ「見れば分かるでしょ?」 少女の方向を指差せば、あぁ…。と納得した。だか、と逆に手を掴まれた。 無言で見れば駄目だと顔を振られた。 ゆ「なんで?」 珀「お前が今行けば、目立ってしまう。そのうち新選組の奴らがくんだろ」 ゆ「…」 確かに目立った行動は出来ない。でも、チラッと少女の方を見ると丁度目が合った。 ゆ「っ…」 助けて。そう言われた気がした。少女が自分と重なる。逃げたくても、助けて欲しいと叫んでも誰も助けてくれない。 珀「ゆきこ?どうした…」 ゆ「駄目…助けなきゃ…」 バッと珀の手を払って少女の方へ向かった。 勢いをつけて少女の腕を掴んでいる浪士の背中に跳び蹴りをくらわせた。 浪士が前のめりに倒れる瞬間に少女の手首を掴んで、こちら側に引き寄せる。 ゆ「大丈夫か?」 「あ、はい…ありがとう御座います」 ゆ「…って、あなたは…この間の…」 「?どこかでお会いしたことありますか?」 あ、この姿じゃ分からないか… この少女は以前、空が助けようとした少女だ。よっぽど絡まれやすい体質のようだ。 「おぃ…てめぇ、誰だ…」 ゆ「名乗る必要はないな。さぁ、お嬢さん行きましょうか?」 「あ、あの…お名前は?」 ゆ「…魁斗と言います」 雪斗はもう新選組にバレているから、他の名前でいいだろうと何となく思いついた名を言った。 「魁斗様…私、飛那といいます。あっ魁斗様!後ろ!」 ガンッ 後ろから斬り掛かってきた浪士の剣をヒラリとかわして倒れ込む鳩尾に一発いれた。 辺りを見回すと、残りは後三人。 三人は刀を構えてゆきこに斬り掛かってきた。近くにいた飛那を突き飛ばして後ろにいた珀に預けた。 「全く…これだから男は…」 はぁ…ため息をつきながら残り三人を落としていく。気絶させておけば、後は他の人がやってくれるだろう。 最後の一人を落として、珀達を振り返った。出来れば刀は使いたくなかったから、弱い相手で良かった。 「魁斗様っ!大丈夫ですか?」 ゆ「あ、はい。飛那さんもお怪我はありませんか?」 「私は大丈夫です…」 ゆ「なら良かった」 ニコッと微笑めば、飛那は顔を赤く染めた。 男五人を一人で倒し、優しい言葉で飛那を気遣う。そこらの男より、よっぽど格好いいと後ろで見ていた珀は思った。 .
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