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煮魚ようの魚と野菜を買ったゆきこと珀は宿屋に戻った。
ゆ「よしっ!珀。夕餉は期待しててね」
珀「あぁ…」
そう言って珀は姿を消してしまった。
稔麿達が戻ってくる前にと、ゆきこは鬘をとって何時もの女人用の着物に着替えた。
着替えも終わり、縁側でお茶を飲みながら女将さんから貰った茶菓子を食べていると、暖かい温もりがゆきこを包んだ。
稔「あの時はゴメン。言い過ぎた。八つ当たり」
後ろからの気配に気が付かないわけないが、わざと気が付かないふりをした。
前に回っている腕に自分の手を重ねてそっと後ろを振り返った。
本当に申し訳なさそうな顔をしている稔麿に思わず笑顔になっていた。
ゆ「ん。私もゴメンね。仲直りしよっか」
そう言うと、稔麿は嬉しそうに頷いて腕の力を強めた。
心がズタズタになって、弱っているときに甘い言葉でゆきこをこちら側に連れて来たのは稔麿。もしかしたら、そのタイミングを狙っていたのかもしれない。
でも、稔麿は新選組の情報を聞き出そうとか、空たちを人質にしようか。とか、ゆきこの心を傷つけるようなことはしなかった。
ただ、ゆきこの傷が癒えるように傍にいてくれて、楽しませてくれて、ゆきこの心は確かに癒えてきている。
ゆ「稔麿。ありがとう…」
傍にいてくれて、助けてくれて。本当に…ありがとう。
もしあの時、稔麿が手を差し伸べてくれなかったら、壊れていたかもしれない。
稔「何が?」
ゆ「…ううん。何でもない」
たとえ稔麿たちがあの人達の敵でも、私は稔麿たちを守ってみせる。
だって、決めたんだもん。この人たちを守るって。あの人達を敵に回したとしても…絶対に。
稔「あ、その茶菓子美味しそうだね。ちょーだい?」
ゆ「…女将さんに貰ったの。美味しいでしょ?」
はい。と茶菓子を渡せば、子供のような笑顔を見せる稔麿にホッとしてしまう。
良かった…仲直り出来て。実は寂しかったなんて言えないけど、意外と稔麿を頼ってるんだって気付いた一日だった。
稔「ゆきこ」
ゆ「ん?」
稔「これからは一緒に買い物行こうね」
ゆ「うん!」
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