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お茶を淹れてきたゆきこは部屋の前で一度深呼吸をして部屋に入った。
部屋に入ったゆきこは固まった。というか、同じような状況があった気がする。
何故か古高に女物の着物を着せようとしている稔麿。暴れる古高を押さえている珀。それを見て腹を抱えて笑っている晋作と小五郎。
とりあえず、卓袱台にお盆を置いて唯一まともに話せそうな沙羅の隣に腰をおろした。
ゆ「この状況はなに?」
沙「…吉田様が…」
ゆ「…稔麿が?」
沙「………ナンデモナイヨ」
なんだその間は。明らかに目を逸らしながら片言で話す沙羅を問い詰めようとしたが、姿を消してしまった。
ゆ「……そんなに?」
一体どんな理由だって言うんだ。
仕方無いなぁ…。やっぱり本人に聞くのが一番かな?そう思ったゆきこは腰を上げて古高の着物を脱がそうとしている稔麿に近寄った。
ゆ「稔麿?何してんの?」
稔「ゆきこ大丈夫?女装させてるんだ」
ゆ「な、なんで?」
稔「…暇つぶし、かな?」
暇つぶしで女装されるなんて、随分不幸な人だなぁ…。他人事のように考えながら脱がされそうになっている古高を見た。
意外と若いんだぁ…と、全然関係の無いこと思っていると、視線を感じてそちらに顔を向けた。
そんな目で訴えなくても…。ゆきこの方を見ながら目にうっすらと涙を溜めて視線だけで助けてくれと訴えている古高を見て、ゆきこはウッと目線をそらした。
それでも感じる視線に、ゆきこは負けた。
ゆ「うっ…と、稔麿。お茶淹れてきたから…」
稔「うん。終わったらね」
ゆ「いや、冷めちゃうよ?」
稔「僕、猫舌だから」
……何も言い返せない。
面倒くさいことには首を突っ込まないほうがいい。賢明な判断をしたゆきこはあっさりと古高を見捨てた。
ゆ「晋兄。桂さん。お茶淹れてきたので飲みませんか?お酒もあるので、私でよければお酌します」
晋「お、気が利くな。じゃあ酒くれ」
桂「私も」
二人を誘って卓袱台の周りに腰をおろした。ゆきこは二つ杯を用意してお酒を注いで二人に渡した。
晋「はぁ…笑い過ぎて腹いてぇ…」
桂「全くだ」
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