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稔「ぶっ」
ゆ「あー…」
晋「…お疲れ」
桂「は、ははは」
沙羅によって完璧な化粧を施された古高は、全く似合っていなかった。髷に化粧、そして女物の着物。かなりのミスマッチ。
もう哀れとしかいいようがない。なんて不憫な奴だ。
稔麿以外、みんな完全に引いているが命令した本人は大爆笑だ。
みんな哀れだとは思うが誰も助けは出さない。もし助けでもしてみろ、次は自分が標的になる。ゆきこを覗いて。
「よ、吉田様…着替えていいですか?」
稔「ぶははは!え、着替え?いいよ」
え?部屋にいる誰もが耳を疑った。あの稔麿があっさり引き下がった?
だが、ゆきこには聞こえてた、小さな声で「出来るものならね…」と付け加えられた呟きが…。
「あ、あれ?き、着物がない?」
あぁ…やっぱりか。稔麿がそんな簡単に引き下がるわけがなかった。みんなが納得した表情をしていたが、納得出来るはずがないのは古高だ。
「えぇぇー!?き、着替えーー」
ゆ「…いいの?稔麿」
着物を探し回っているが、きっと無駄だろう。沙羅か珀に隠させたに違いない。機嫌の良さそうなその顔はまるで新しい玩具を手に入れた子供のようだった。
まぁ、普通の子供はこんな真っ黒いオーラは出せないが。
そして、そんな笑顔の稔麿を止める者も誰も居なかった。
ゆ「そういえば、晋兄。いつから珀は潜入するの?」
晋「明日。」
ゆ「あ、明日?」
いくらなんでも急じゃないか?まぁ、晋作らしいといえば納得するが。
ふぅ…と、息をつきながら体から力を抜いて稔麿にもたれかかった。
稔「ん?どうしたの?」
ゆ「んー…なんか疲れた」
稔「そっか…」
ポンポン…と、頭を軽く叩いているとゆきこの目蓋はトロトロと閉じられていく。ゆきこは身をよじって稔麿の胸板に顔をうずめた。
ゆ「…眠い」
稔「寝ちゃえば?」
ゆ「やだ…寝顔見られたくないし…」
そう言いながらも、こっくりこっくりしているゆきこに稔は仕方ないなぁ…という風に微笑んだ。
晋「ふっ…ゆきこもまだまだガキだな」
桂「仕方あるまい。まだ少女だ。きっと疲れが溜まっていたんだろう」
ゆきこの様子を見て和んでいるが、役一名必死に部屋を駆け回っている。
絶対この部屋には無いのに諦めずに部屋を駆け回っている古高。
いい加減、面倒くさくなったのか稔麿は沙羅に指示し着物を持ってこさせた。
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