―潜入―

3/15

1416人が本棚に入れています
本棚に追加
/592ページ
どうやら、たった一週間で三馬鹿の性質を理解したようだ。何となく想像出来て苦笑いしていると、三馬鹿がむくりと起き上がった。 新「綺麗なお嬢さん。お名前は?」 ゆ「…桜。です」 新「それはそれは!綺麗なあなたにぴったりのお名前ですね!どうです?霧風なんかやめて俺にしない?」 ゆ「え、えと…」 うわぁ…本当に気付いてないんだぁ。どうしようかと苦笑いで珀を見ると、はぁ…と、ため息をついていた。 珀「人の恋人を誑かさないで下さいよ…」 ゆ「あはは…」 平「そーだよ、桜さん引いてんじゃん」 と、そこへ… 「おいっ!!なんの騒ぎだ!!」 鬼の副長、土方歳三登場。 歳「なんだ、霧風。ん?その女は…お前の恋人か」 珀「はい。俺の恋人です」 ゆ「桜と申します。諷磨さんがお世話になっています」 相変わらず、眉間に皺を寄せて…。折角の美男子が台無しだ。 きっと…一人で背負い込んでいるんだろうな…。 歳「あぁ…。それより、桜…だったか?お前、年はいくつだ?」 ゆ「…何故、ですか?」 歳「いや…。なんでもない。あんまり長居すんなよ?襲われるぞ」 長い髪をなびかせながら言うその姿は一見怖そうにも見えるが、ゆきこを気遣ってだと分かる。 本当に…。不器用な人だなぁ…。 ゆ「はい。ご心配頂きありがとうございます」 そう言うと、土方は目を見開いた。怖がられるのは多いが、お礼を言われるのは滅多にない。 あの女…ゆきこに似ている。 ゆ「…では、私はこの…」 「どうしたんですか皆さん集まって…」 ゆきこの言葉を遮って現れたのは総司だ。ビクッと肩を震わせたゆきこを、珀は見逃さなかった。 総「あれぇ?霧風さんの恋人ですか?」 珀「はい」 総「へぇ…お綺麗で、す、ね…」 気付かれたっ!? 途切れ途切れになった言葉にゆきこは肩を震わせた。内心冷や汗だらだらだったが、平然を装ってにっこりと総司に微笑んだ。 ゆ「桜と申します。諷磨さんがお世話になっています。諷磨さん、お身体にお気を付けて下さいね?それでは、また…」 そう言ってゆきこは止める間もなく帰っていった。 いつの間にか、着物の袷に小さく折りたたまれた紙が入っていた。 .
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1416人が本棚に入れています
本棚に追加