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どうやら、たった一週間で三馬鹿の性質を理解したようだ。何となく想像出来て苦笑いしていると、三馬鹿がむくりと起き上がった。
新「綺麗なお嬢さん。お名前は?」
ゆ「…桜。です」
新「それはそれは!綺麗なあなたにぴったりのお名前ですね!どうです?霧風なんかやめて俺にしない?」
ゆ「え、えと…」
うわぁ…本当に気付いてないんだぁ。どうしようかと苦笑いで珀を見ると、はぁ…と、ため息をついていた。
珀「人の恋人を誑かさないで下さいよ…」
ゆ「あはは…」
平「そーだよ、桜さん引いてんじゃん」
と、そこへ…
「おいっ!!なんの騒ぎだ!!」
鬼の副長、土方歳三登場。
歳「なんだ、霧風。ん?その女は…お前の恋人か」
珀「はい。俺の恋人です」
ゆ「桜と申します。諷磨さんがお世話になっています」
相変わらず、眉間に皺を寄せて…。折角の美男子が台無しだ。
きっと…一人で背負い込んでいるんだろうな…。
歳「あぁ…。それより、桜…だったか?お前、年はいくつだ?」
ゆ「…何故、ですか?」
歳「いや…。なんでもない。あんまり長居すんなよ?襲われるぞ」
長い髪をなびかせながら言うその姿は一見怖そうにも見えるが、ゆきこを気遣ってだと分かる。
本当に…。不器用な人だなぁ…。
ゆ「はい。ご心配頂きありがとうございます」
そう言うと、土方は目を見開いた。怖がられるのは多いが、お礼を言われるのは滅多にない。
あの女…ゆきこに似ている。
ゆ「…では、私はこの…」
「どうしたんですか皆さん集まって…」
ゆきこの言葉を遮って現れたのは総司だ。ビクッと肩を震わせたゆきこを、珀は見逃さなかった。
総「あれぇ?霧風さんの恋人ですか?」
珀「はい」
総「へぇ…お綺麗で、す、ね…」
気付かれたっ!?
途切れ途切れになった言葉にゆきこは肩を震わせた。内心冷や汗だらだらだったが、平然を装ってにっこりと総司に微笑んだ。
ゆ「桜と申します。諷磨さんがお世話になっています。諷磨さん、お身体にお気を付けて下さいね?それでは、また…」
そう言ってゆきこは止める間もなく帰っていった。
いつの間にか、着物の袷に小さく折りたたまれた紙が入っていた。
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