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全員の前に食事運び終わって、隊士達は菊の元気な声で食べ始める。ゆきこと菊は勢い良く食べ進める隊士達を見て顔を綻ばせた。
「確かに大変ですけど…」
「こんな嬉しそうな顔されると何も言えないわよね…」
今までこんなに嬉しそうに自分が作ったご飯を食べてくれた人はいない。ゆきこは先程まで感じていた疲れが少し軽くなったように感じた。
「今日の飯、ゆきこが作ったんだよな!?」
「あ…はい。…もしかして美味しく無かったですか?」
「いや、美味いよ!」
「おお美味ぇよ!」
「良かったぁ…」
新八、平助、左之がゆきこを見上げて笑顔を向けた。まだ男の人は少し怖いけど、幹部の人達は段々平気になって来たと、ゆきこは心の中で安堵した。
ゆきこと菊は早めにご飯を食べていたから、隊士にお代わりをよそったり、お茶を入れたり、お酒をついだり…忙しく動き回っていた。
「ゆきこ、茶くれ」
「はい」
お茶を持って呼ばれた土方の所まで持っていく。他の人は少しお酒を飲んでいる人もいるのに土方は一口も飲んでいない…。どこか調子が悪いのかとゆきこは土方を覗き込んだ。
「土方さんはお酒呑まれないんですか?」
「ああ…俺はお茶でいい」
お茶は人それぞれ好みが違うが土方はどの位がいいのか分からず熱すぎず温すぎない調度いいお茶を煎れた。
「そう言えば土方さん」
「あ?」
「沖田さんは…今日は巡察ですか?」
「ああ…もうそろそろ帰ってくるんじゃないか?」
「そうですか……」
しょぼん…と寂しそうに顔を俯かせたゆきこに土方はからかうように笑みを浮かべて茶器を手に取った。
「クク…なんだ、寂しいのか?」
「ちっ違います!!」
「そうか」
少し睨んでも土方はどこ吹く風で、余裕そうにお茶を飲んでいる。その時、外が騒がしくなった。
ゆきこは急須を置くと立ち上がり、駆け出していた。そんなゆきこを、土方は愉快そうに見送っていた。
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