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珀と土方達が戦い始めたが、新八達が掛かってくる様子はない。
…やるなら、今しかない。そう覚悟したゆきこは珀に繰り出されようとした土方の刀を自分の刀で受け止めた。
珀「ゆきこっ!?お前何して…」
ゆ「珀。先に逃げて」
いきなりのゆきこに刀を止められた土方は一瞬動きが止まった。
ゆ「…お願い。逃げて」
珀「何言ってんだよっ」
ゆ「珀にはっその情報を晋兄達に届ける任務がまだ残ってるでしょっ!?」
珀「だけどっ…」
ゆ「…このままだと、二人とも死んじゃうから…お願いっ」
再び斬り掛かってきた土方の刀を受け止めて、クナイを投げる。
ゆ「お願い…。私のために行って、珀っ!行って!」
まだ、躊躇っている珀に原田が斬り掛かる。それを見て、クナイを原田の手を目掛けて投げつける。
ゆ「珀っ!!行って!!」
珀「っ……ゆきこ…」
ゆ「…稔麿に、必ず戻るから待ってて。って伝えて?」
珀「…っ、必ず助けに来るからっ!!」
そう言って、やっと決意した珀は出口に向かって走った。そこを原田が追い掛けようとした。それを小太刀を投げて止める。
ゆ「…止めさせません。あなた達の相手は私です」
左之「ゆきこ、諦めろ。お前じゃ俺たちにはかなわねぇ」
ゆ「っ…なめないで下さい!」
土方の刀を押し返して、左之に斬り掛かる。
さっきから、違和感が消えない。総司さんが動いてない。
ゆ「っ…相変わらず、甘い人達ですね」
三人から繰り出される刀をよけていくが、その身体には少しずつ傷がついていく。
忍装束は、動きやすさを重視している。肌を守る部分は普通の着物に比べたら大分少ない。
ゆ「はぁ、はぁ…私が、守るんです…」
息が上がってきて、膝が震える。目の前が霞む。流石に三人同時に相手にするのは無理があったのかな…?
もうそろそろ、珀は着いたかな。きっと稔麿は怒ってるんだろうなぁ…。その姿が簡単に想像出来て思わず口元が緩んでしまった。
歳「…笑える状況か?」
ゆ「あ、すいません。だけど、もう珀は着きましたかねぇ…」
左之「霧風は珀っていうのか…?」
ゆ「はい。なかなか良い人だったでしょう?」
あー…本当に身体に力が入らない。
もう、駄目なのかな…。
チラッと総司を見ても動こうとしない。
ゆ「…と、し…麿…ごめん、ね…」
最後にそう呟いて、ゆきこは倒れた。
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