―潜入―

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ゆきこが倒れたことに驚いた三人は駆け寄ろうとした。が、目の前に小太刀が突き刺さった。 小太刀が投げられた方向を見ると、そこには知らない男が腕を組んで立っていた。 男はスタスタと近づいてきて、ゆきこを肩に担ぎ上げた。 ふぅ…と、そのまま去ろうとする男に、三人が刀をむけた。 歳「おぃ…てめぇ、何者だ」 「名乗る程のもんじゃねぇよ」 新「ゆきこを離せ…」 「それは無理だな」 左之「んだと…?」 いくら凄んでも、男は飄々としていた。しかし…と、土方はチラリと総司を見た。先ほどから動こうとしない。 …何を考えてるんだ、総司。 「んじゃ、俺はこのへんで」 と、土方が隙を見せた瞬間に男は出て行ってしまった。 暖かい…。心地よい暖かさと頬を撫でる風に誘われるように目を開けた。 目の前に広がる広い背中に意識がハッキリしてくる。 ゆ「ぇ…?」 「ん?起きたか」 ゆ「だ、誰ですか?」 「以蔵。岡田以蔵だ。晋作にお前を助けに行けと言われてな」 見たことの男性におんぶされていて、ゆきこの頭の中はぐちゃぐちゃだ。 ただ、晋作の名前が出たことによって少し落ち着いた。 ゆ「…ありがとう、ございます」 岡「あぁ。しかし、お嬢ちゃんは肝が据わってんな。大の男三人を一人で相手すんなんてな」 ゆ「いえ…。あ、あの下ろしてくれませんか?自分で歩きます」 晋「自分の身体をよく考えてみろ。身体に力入るか?」 …あれ?身体に力が入らない。腕に力を入れようとしても、力が入らない。 腕に力が入らないので非常にバランスがとりずらい。以蔵の腕が頼りだ。 ゆ「重たかったら言って下さいね…」 晋「お嬢ちゃんはもっと太るべきだな。少し軽過ぎる」 あれ?なんで私、知らない男の人におんぶされてるのに怖くないんだろう…。 まぁいいや…。なんか、落ち着く。 顔を背中につけて身体の緊張をとく。 ゆ「…以蔵さん」 岡「ん?」 ゆ「あの人達は、優しいですね…」 岡「あぁ…。甘すぎるな」 そうですね。と呟いてゆきこは眠りについた。その顔は安堵に満ちていた。 .
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