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なんか…。
なんか、空雅さんみたい。あの大きな手も、ぶっきらぼうだけど、優しい目。全部、空雅さんと似ている。
ゆ「…珀は?ちゃんと帰ってきた?」
晋「あぁ。大丈夫だ、今はちょっと出てるけどな」
ゆ「そっか…良かったぁ…」
岡「何が良かった。だ、たく…死にかけたくせに」
ゆ「もぅ…以蔵さん」
そうだよ?と言いながら後ろから頬を抓ってきた稔麿に軽く抵抗する。
ゆ「は、はにゃして」
一応けが人なんだけどなぁ…。
もうっと、稔麿の手を離して稔麿の腕の中から抜け出して、小五郎の後ろに隠れた。
ゆ「桂さん、助けて」
桂「え?わ、私か!?」
稔「小五郎…ゆきこから離れて」
どちらかと言うと、ゆきこが離れないのだが…。と言いたいが、前からの威圧感と後ろからの威圧感で言うに言えない。
稔麿が一歩踏み出した次の瞬間、小五郎の悲鳴が響いた。ゆきこは勿論離れて、晋作と以蔵のそばに行った。
岡「お嬢ちゃんは意外と黒いんだな。うん、良いもん見た」
ゆ「…以蔵さん」
岡「ん?なんだ?」
ゆ「えと…その…だ、抱きついてもいいですか?」
岡「……」
いきなりの爆弾発言に以蔵は勿論、晋作も固まった。
ゆ「あ、嫌なら断ってくれてかまいません」
岡「い、いや…良いけどよ。お嬢ちゃんは男が苦手なんじゃねぇのか?」
ゆ「あ…その、以蔵さんは、知り合いに似ているんです…」
しゅん…と、したゆきこが思わずお預けをくらっている子犬のように見えた。
岡「いいぜ?」
ゆ「本当ですか?」
本当に嬉しそうに、ゆきこは以蔵の背中に抱きついた。
よしよしと、髪を撫でてやると猫のように目を細めた。
ギュッと以蔵の背中に抱きついているゆきこに晋作は首を傾げていた。
ゆ「空雅さん…」
ポツリと小さく漏れた呟きを以蔵は聞き逃さなかった。
寂しそうに呟いたゆきこ、きっと大切な奴だったんだろうと以蔵は納得した。
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