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本当に、大好きだった。そこに行けば嫌そうな顔しながらも受け入れてくれた。
男なんて信じないって決めていた心を一番最初に破ったのは空雅さんだった。
そう、あれは中学に入って二ヶ月たったあの日のこと…
「ゆきこー!!」
ゆ「みき…どうしたの?」
大声でゆきこの名前を呼びながら走ってきたみきを落ち着かせる。
入学して二ヶ月たった。ゆきこは先生達からの信頼もあり、勉強も出来て運動神経抜群。そして、その容姿で一目置いた存在になっていた。
男子からも、女子からも好かれるようになっていた。
みき「あのね、今日お母さんが帰ってくるの!!」
ゆ「本当?良かったね。よろしく伝えておいてね?」
みき「うん!」
その頃はまだ、そこまで男子が苦手だと思っていなかった。でも、やっぱり怖い。お父さんみたいに、暴力をふるうんじゃないか…って、
二人で話していたら、それを聞いていたであろう男子が二人話し掛けてきた。
みきも、あの時は人が嫌いじゃなかった。
「なになに?お前のお母さんどっか行ってんの?」
みき「海外行ってんの!今日帰ってくるんだよ」
「へぇーすげぇな!」
みき「でしょ?」
どうしよ…。身体が震える。怖い、やだ、
みき「…ゆきこ?どうしたの?」
不思議そうに覗き込んでいた。ハッとして男子二人も不思議そうに見ているのに気付いた。
ゆ「あ…えと…ちょっと保健室行ってくる…」
返事も聞かずにゆきこは走り出した。後ろで男子が何か言ってたけど無視した。
そういえば、まだ保健室には来たこと無かったな…。そんなことを思いながら保健室のドアを小さく叩いて中に入った。
ゆ「…失礼します」
「あぁ?」
先生の筈のその人は椅子に足を組んで座っていて、白衣の下のシャツは着崩して、一見先生には見えない先生。
「なんだ、どっか怪我してんのか?」
あ、そういえば怪我なんかしてない。
…どうしよう。この人怖い…。
怪我…ある。確か剣道をしてるとき外されたんだ。
ブラウスを捲って、肘を出した。
ゆ「湿布を貰いたくて…」
「あぁ…ん?他にもあるじゃねぇか…」
ゆ「いやっ」
パシッと、腕を掴んできた手を払ってしまった。
怖い…怖い…やだ…。目に涙が溜まってきて視界がぼやける。
ゆ「ごめん、なさ…ごめんなさい…」
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