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「お前…男が駄目なんだろ」
ゆ「っ…はい。ごめんなさい…」
ふぅ…と、先生はため息をついて机から湿布を取り出した。
そこに座れ。と言われ近くにあった椅子に座った。
「別にお前が謝ることじゃねぇよ。ただ、傷ぐらいは手当てさせろ。これでも保健の先生だからな」
そう言いながら、腕を掴んで肘に湿布を貼った先生。怖そうな見た目とは違って優しい手つきに少しだけ緊張を解いた。
「ほら、他の所も出せ。他の奴らには言わねぇから、手当てするだけだ」
ゆ「……」
「ほら、」
ブラウスを肩まで捲って、もう片方も同じように捲った。
だが、ゆきこの細い腕を見た先生の顔が変わった。
ゆきこの腕は、肘から上が殆ど青あざだらけだった。しかも両腕。
「どうしてこんなこと…お前、男が駄目だって言ったよな?じゃあ彼氏か?」
ゆ「いえ…」
「じゃあ……まさか、父親…か?」
ゆきこの表情を見て先生は確信した。間違いなくゆきこは父親から虐待を受けている。しかも、後少しで腕が折れそうなくらいに。
一度立ち上がり棚から湿布やら包帯などを取り出して、ドアまで行って鍵を閉めた。
ゆ「え?」
「手当て中に誰か入ってきたらどうすんだよ」
ゆ「あ、そっか…」
再び、ゆきこの前に座った先生は、手当てを始めた。
さっきも思ったけど、先生は見かけによらず手つきが優しい。実は優しいんだろうな…。
この人は、信じられる…かな。
確かにそう思えた。
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