―潜入―

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あれから、ゆきこは色んな話しを空雅に聞いて貰った。空雅は静かにそれを聞きながら時折相槌をうって、意見を出して…穏やかな日々がそこにはあった。 そして、暫く経った頃ゆきこは空雅の秘密を教えられた。確かに聞いた瞬間は怖かった。でも、空雅さんは空雅さんだからと、思い直した。 空雅は実は結婚していて、その人はもの凄く美人だそうで、その人にも会わせてもらった。中学校生活が穏やかにおくれているのは、確かに空雅が居てくれたから。 『なんだ…またか』 『…ごめんなさい』 『だから、お前が謝ることじゃねぇだろ』 申し訳なさそうな表情をしているゆきこの腕に湿布を貼り包帯を巻き付ける。 『俺だったら何とか出来る』 それはつまり、裏の力を使うという意味。ゆきこは慌てて首を横に振った。それを見た空雅は不機嫌そうな表情を浮かべた。 『だ、駄目ですっ絶対駄目』 『何でだよ。アイツらもお前になら力を貸してやっても怒らねぇよ』 『駄目ですっ!!もしそんなことして、学校にバレたらどうするんですか!?私なんかのために、自分を犠牲にしようとしないで下さい!!』 本当に怒っているゆきこに空雅はプッと噴き出した。ゆきこはそれを不思議そうに首を傾げた。 『いや…そうだな。ありがとな』 『?お礼を言われるようなこと言ってませんよ?むしろ、怒られるかと思ってました…』 『怒るわけねぇだろ?じゃあ、お前は何かあったらすぐに俺の所に来い。休日でもいつでも、な…』 『いいんですか?そんなこと言われたら本当にそうしちゃいますよ?』 『いつでも来い。ほら、泣くなって』 ポロポロと涙を流すゆきこの髪を撫でながら空雅は、ふっと笑った。もしゆきこが、空雅の裏の力に頼ったら見放すつもりだった。だがゆきこは空雅だけを頼った。それが空雅には嬉しかった。 『俺がお前の主治医になってやるよ。いつまでも、な…約束だ。俺は一度交わした約束は永遠に守り続ける。絶対な』 そう言って指切りをした。その言葉が、その約束がゆきこにはなによりも嬉しかった。やっと、穏やかに休める場所を見つけた。そう思った。 .
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