―潜入―

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ゆ「く、う雅さん…」 以蔵の背中に抱きつきながら、そう呟いているゆきこはとても寂しそうだ。 岡「その、空雅って奴はお前の恋人か?」 ゆ「いえ…私の、兄です。本当の兄ではないですけど、私にとっては大切な人です…」 言いながらポロポロと涙を流し始めたゆきこを、正面から抱き込んだ。 ゆ「あ、いたいっ…会いたいよぉ…」 寂しい…。別に稔麿達と一緒にいて、楽しくないわけじゃない。心は癒やされるし休まる。一緒にいて守りたいと思う。でも…、今まで自分を支えてくれた人と離れていると、頼れないということを、今更ながらに実感した。 ゆ「ふぇっ…空雅さんっ…空雅さん…」 もしかしたら、初恋はあの人だったのかもしれない。 みきより、みきの両親よりも、誰よりも親身になってくれた。そして、誰よりも頼れたのはあの人だった。 ゆ「…空、雅さんっ…」 岡「お嬢ちゃん、今は泣いても良い。だから、その分笑えよ?」 ゆ「はいっ…だから…」 岡「あぁ…今は思う存分泣くといいさ」 稔麿にも、総司さんにも、あの人の変わりなんて出来ない。誰もそんなこと出来ないんだ。 あの人と同じ温もりのこの人に今だけは頼りたいんだ…。 泣き疲れて眠ってしまったゆきこの目尻に溜まっている涙をそっと拭った。 稔「君が来てくれて助かったよ…」 ふわっとしているゆきこの髪を優しい手つきで梳いてしるのは稔麿。自分じゃ、ゆきこのあの部分は引き出せない。 稔「ゆきこを貸して?寝かせてくるから」 岡「あぁ…」 ゆきこをそっと抱き上げて部屋を出る。 全てを抱え込む癖があるのか、ゆきこはいつも我慢して溜め込む。そして… 稔「君はいつの日か壊れてしまう…」 いつか、その日が来るとき自分はこの少女の隣にいてあげれるのか…。 どうか、頼ってほしい。 稔「ゆきこ、僕はキミが大切なんだよ?だから、頼ってよ」 キミを大切に思っている人は他にもたくさん居るんだから。その人たちにも、キミは頼っていいんだよ? キミはきっと、無条件で頼ること知らないんだろうね。 せいぜい、キミが壊れないように、僕は見守っていこう。 .
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