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ゆきこを寝かした稔麿は、晋作達の部屋には戻らずに、そのままゆきこの隣にいた。
自身の髪を結んでいる髪紐をとって、髪をおろす。
この髪紐は、ゆきこが作ってくれた物だ。
ふぅ…と、気怠げに落ちてきた髪を掻きあげる。以前、髪を切ろうと零すとゆきこがこの髪紐を作って稔麿に贈ったのだ。
稔「本当に、面白い子だ」
まさか、自分が振り回されるとは思っていなかった。それが出来る人物が居るとも思わなかったけど。
この子を見てると、本当に飽きない。きっと、この子がアイツらを忘れることなんてないのだろう。
でも、この子は自分達を選んでくれた。だから、この子の心にアイツらがいるとしても、我慢しよう。
ゆ「んぅ…」
稔「ゆきこ?」
ゆっくりと目を開けたゆきこは焦点の合わない目でぼうっと稔麿を見つめた。
ゆ「…稔麿?」
稔「うん。そうだよ」
寝ぼけているのか、上体だけ起き上がってゆらゆらしているゆきこは何を思ったか稔麿に抱きついた。
稔「え?」
ふわっと、稔麿の髪とゆきこの髪が扇のように広がって二人は倒れ込んだ。
稔「いっつぅ…」
いきなりのことで受け身がとれなくて、背中を思いっきりうった。
ゆ「んー…」
…寝ぼけてる。どうしたもんかなぁ…と思いながら何となく広がっているゆきこの髪を撫でた。
気持ちよさそうにスリスリと胸元にすり寄った。
稔「ゆきこ、布団に戻ろう?眠いんだろう?」
ゆ「…ぅん…稔麿も、いっしょに、寝よ」
稔「………」
この子は自分が言った意味が分かっているのだろうか?それは安心しているという意味かな?
苦笑いを零して、ゆきこと布団に入り込んだ。頭の下に腕を入れて抱き込んだ。小さな手で着物を握ってくるゆきこは、安心しきった顔で眠っていた。
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