―刃の重み―

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ゆ「あ、あの子…」 二人で買い物を済ませていると、ふと向こうに集団が出来ているのに気がついた。 ゆ「以蔵さん。なんですかね?あれ」 岡「行ってみるか?」 コクリと頷いたゆきこを連れて二人は集団に向かった。 円状になっている集団の中心を見ると、五才くらいの少年が、二人の武士を睨みつけていた。少年の足元には同い年くらいの少年がうつ伏せになって倒していた。 それを少年は手を広げて守るように立っていた。 「この野郎!よくも信クンを…」 「はっ、俺たちに楯突くのが悪いんだよ餓鬼」 「なんだよ!刀さしてるくせに、何にもしない奴らが威張るな!」 少年の一言に、武士はキレたのか、刀を抜いて少年に突き付けた。 「餓鬼が…俺たち武士を愚弄する気か!」 そのまま、刀を振り上げ少年を斬ろうとした。 少年は覚悟を決めてぎゅっと目を瞑った。 だが、いつまで経っても痛みは襲ってこない。そろりと目を開けると目の前に大きな背中が広がっていた。 パチクリと目を瞬くと、もう一人綺麗な女人が現れて少年ともう一人の少年を抱き上げた。 ゆ「大丈夫?」 「え…う、うん。俺は平気だけど信クンが…」 ゆ「んー…大丈夫。気絶しているだけよ」 安心したのか、少年は泣き始めてしまった。 二人をぎゅっと抱き締めてから地面に下ろした。 ゆ「ほら、男の子が泣かないの」 「だっ、だってぇ…ふぇ、良かったぁ…」 睨みつけていたけど、きっと友達が倒れて怖くて怖くて、仕方なかった筈なんだ。 ゆきこ達が助けてくれた時、張り詰めていた緊張が一気に崩れたんだ。 ゆ「…ほら、信クンを連れて逃げなさい」 「うっん…でも、お姉ちゃんは?」 ゆ「…私たちは大丈夫。ほら、行きなさい」 「う、うん…ありがとう!」 少年は信クンを引きずりながら離れていった。途中で野次馬状態だった大人達に連れて行かれた。 ゆ「…以蔵さん。ありがとうございます」 岡「晋作達が、お嬢ちゃんを良く見ておけと言っていた意味が分かったよ…」 ゆ「あは、」 たった一睨みで武士達の動きを止めさせた以蔵に苦笑いでお礼を言った。 やっと、我に返った武士達はいきなり現れた人相の悪い男と美人の女人が現れて驚いているようだった。 .
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