―刃の重み―

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「な、何なんだてめぇら!」 岡「うるせぇな、吠えるな。犬か」 「んだとぉ!?」 ふぅ…あんな子供相手にいい年こいた大人が何やってんだか…。 「そこの女人もだ!女はっ……っ!?」 ゆきこからは、先程少年を落ち着かせた温かい笑みは消え、冷たく鋭い目つきで武士達を睨んでいた。 「っ…なんとか言え!」 ゆ「…黙れクズ共!あんな子供にまで手をあげて、恥ずかしいとは思わないのか!これ以上喋ってみろ、お前達が恥をかくことになるということを忘れるな!」 あまりの気迫に、武士達は動けなくなった。ゆきこの気迫に以蔵も驚いた。普段はそこまで言うゆきこではないので、あそこまで言うゆきこに、驚きもしたが、笑みもこぼれた。 普通の、怖がるだけの女よりはよっぽどマシだ。 「こっこのアマァ!調子に乗りやがって!ふざけた口きいてんじゃねぇよ!そこまで言うなら命掛かってるんだろうな…」 ゆ「……そちらこそ。後悔しませんか?」 「あたりめぇだ!さっさと掛かってこい」 その言葉を聞いて、ゆきこは嘲笑うかのようにふっ…と、笑った。 ゆ「とことんお馬鹿さんですねぇ。こんな所で斬り合いをしていいとお思いですか?」 ゆきこの台詞に自分達がどこにいるのかが、分かったらしく、こっちに来い。と、以蔵を先頭にその場を離れた。 以蔵に連れられてやってきたのは河原で人通りの少ない場所だった。 此処なら大丈夫だろうと、辺りを見回したその時… ガキンッ ゆ「後ろから斬り掛かってくるなんて随分卑怯ですね…」 「ちっ…」 寸での所で刀を抜いて武士が振り下ろした刀を受け止めて、弾きかえした。 チラリと以蔵を見ればそちらも始まっていた。 ゆ「全く…あなた方は本当に武士ですか?」 バサッと着ていた着物を脱ぐと、忍装束が出て来た。髪の結び方を変えて、横ではなく、頭の上で結びなおす。 ゆ「さぁ…掛かってきなさい」 「なめやがってぇ!小娘がぁ!」 無茶苦茶な振り方して斬り掛かってくる武士の刀を難なく受け止める。 隙をみて鳩尾を蹴り上げる。その拍子に武士の手から刀が飛んだ。 そして、倒れた武士に刀を突き付けた。 「…ちっ、殺せよ」 ゆ「え?」 吐き捨てるように言われた言葉の意味を理解するのに時間が掛かった。 そして、理解した。こうして斬り合いをするということは、どちらかを殺した時点で決着がつくのだと……。 .
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