―刃の重み―

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ゆ「…っと、し麿ぉ…」 稔「大丈夫だから、ゆきこ。ゆっくり呼吸して…」 吸って、吐いて…。稔麿の言葉を聞きながらゆっくり呼吸すると、乱れた呼吸はだんだん、落ち着いてきた。 だが、あの武士が倒れていく映像が目に焼き付いている。 私が殺したんだ… やっと、ハッキリ自覚した感情が胸の中で暴れている。少しでも気を緩めれば、涙として、出て行くだろう。 稔「ねぇ、ゆきこ。僕はね人が死ぬのには意味があると思うんだ。 今日たまたまゆきこ達がアイツらに会って、殺された。それは運命だった。今日ここで、ゆきこに殺される運命だった」 ゆ「運、命…」 稔「そう。…コイツらの死には必ず意味がある。だから、気に病むなとは言わないし。言えない。だから、自分でちゃんと結論をつけな」 ゆ「…うん」 だから、と言って稔麿は更にゆきこを強く抱き締めた。 稔「今はちゃんと泣きな。溜め込むと余計に悪いから」 ゆ「っ…私が、泣いて、いいの、かなっ?」 稔「泣いちゃいけない人なんて居ないから…」 お願い。沢山の人を殺してきた僕を、嫌わないでくれる? あんな事を話したけど、本当は自分に言い聞かせていたのかもしれない。 自分の胸に縋りつくように泣いているゆきこを見て、ほんの少し安心したんだ。 まだ、泣いてくれる子がいる。泣けない自分のかわりに泣いてくれている。そんな気がした。 ゆ「う、ふぇっ…ごめん、なさい、ごめんなさい!ごめんなさいぃ…っ…ごめ、なさ、ごめんなさいっ」 ごめんなさいと繰り返すゆきこの背を安心させる様にポンポンと同じ速さでゆっくりと叩く。 チラリと以蔵を見ると、居心地の悪そうに目線をそらしていた。 少しだけ殺気を出して、こちらに視線を戻させて、目だけで帰るように足す。 分かったのか、以蔵は殺した二人を引きずって此処から離れた。きっと、稔麿と同じことを以蔵も思った筈だ。 もう、人を殺すことに何の感慨も受けないくらい人を殺めてきた。 ただ、ゆきこはたった一人を殺しただけで、こんなになる。自分達の分まで泣いてくれているような錯覚を受けそうになる。 稔「君だけは、そのままで…」 そのままの君で居てくれ。 .
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