序章

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『守りたい人達がいる。だから私は此処にいる。その人達のためなら、何でも犠牲に出来る』 そう言って、泣いた少女がいた。 誰よりも優しく、しかし、誰よりも自らの手を血で染めた。心を殺し、刀を取り、鬼で在ろうとした。 愛する人のため、守りたい人達のため、そして自らが信じた誠のために少女は鬼の道を選んだ。 どんなに挫けようと、泣こうと後悔しても少女は立ち止まらなかった。時代の激流に流されないように必死に前を向き、立ち向かった。 全てが揺れ動く時代の中で何を信じ、何を貫けばいいのか、少女は悩み苦しみ、そして導き出した。 自らの命を削ってでも守りたい人達が出来た。どれだけ自分が傷つき、限界なのかも気が付かずに身体に負荷をかけ続けた。 そして、そんな少女を愛した人がいた。 少女の傷を癒やし、支え、迷う少女の背中を押した。少女の全てを包み込み、彼は少女の光となる。 『…大丈夫。迷うことなんかありません。あなたが信じた道を進みなさい。私は此処であなたが帰って来るのをずっと待っていますから。必ず生きて帰ってきて下さい』 『私は、私が信じたモノのために戦う。初めて、守りたい人が出来たんです。邪魔、しないで下さい。私は、こんな所で挫けるわけにはいかないんです。私を待ってくれている人がいるんです』 二人は約束した。何があっても決して迷わないと。そして、いつの日か必ずまた会おうと。 幕末という激流の時代で彼らは決して諦めることなく、自らが掲げた誠のために戦った。少女はそんな彼らを陰から支え続けた。 .
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