―乗り越えて―

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ゆ「もう少し、自分を大切にして?私は後回しにしていいかっ!?」 言葉の途中で引き寄せられて、力強く抱き締められた。微かに稔麿の身体が震えている気がしてそっと背中に手を回した。 稔「本当に、君は馬鹿だね…」 ゆ「…稔麿もだよ」 本当は、こんなに弱いのに…。私はいつも頼ってばっかりで、何もしてあげられない。私は、稔麿のために何が出来るんだろう? ゆ「稔麿、私に出来ることがあったら何でも言ってね…」 寂しそうにポツリと呟いたゆきこから、少しだけ身体を離し顔を覗き込んだ。 こんなにも、心配してくれる君が、大好きだよ。 そっと、頬を両手で挟み顔を上げさせた。そして…顔を近付けて額に口づけた。 いきなりの事にキョトンとしているゆきこに、頬にも口づけた。 ゆ「稔、麿?」 稔「可愛い僕のお姫様?君は隣で笑ってくれるだけでいい」 ゆ「そ、それだけ?」 稔「うん。それだけで僕は十分さ」 納得出来ないという顔をしているゆきこに微笑んで、もう一度頬に口づけた。 くすぐったそうに身をよじるゆきこは笑いながら稔麿から離れようとした。 が、腕を引っ張られて再び稔麿の腕の中に。 ゆ「…私、こんな風に笑っていていいのかな?」 腕の中で笑っていたゆきこがふと、零した一言にピタリと稔麿は動きを止めた。 きっと、ずっと、ゆきこはこうして自分を攻め続けるんだろう。 稔「ほら、笑わないと」 ゆ「…そうだね。桜舞もちゃんと手入れしてあげないと」 稔「さぁ、帰ろう?」 ゆ「うん」 二人は手をしっかりと繋ぎながら宿屋に戻った。その時の二人の顔はとても晴れやかだった。 .
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