―池田屋事件―

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もうすぐ、目の前まで迫ってるって、あの日が来るって分かってた。最近、みんな忙しくなって以蔵さんも最近は殆ど家に帰ってこない。古高さんも捕まった。 でも、まだ、心の準備が出来て無かった。 ゆ「最近、みんなに会えないなぁ…」 宿屋で一人で留守番しているのが殆どだった。あんなに賑やかだったから、余計に辛い。 ゆ「寂しい、な…」 一人は好きじゃないから。こういう時はあの頃を思い出す。お父さんに会うことが怖くてずっと部屋にいた頃を…。 そんなことを考えているうちに、ゆきこは眠りについた。空から降り注ぐ太陽の光がゆきこを優しく照らしていた。 縁側で猫のように身体を丸めて眠っているゆきこを発見した稔麿は起こすかどうか悩んで、止めた。 静かに、音をたてないようにゆきこの隣に座った。最近、殆ど一緒に居られなかったからきっと、寂しい思いをさせたに違いない。 ゆ「ん……稔、麿?」 稔「あぁ、起きたかい?…おいで」 迷うことなく、稔麿の広げられた腕の中に抱きついたゆきこは、稔麿の肩口に顔をうずめた。 ゆ「っ…寂しかった…」 稔「うん。ごめんね」 ゆ「一人は嫌い…」 稔「そうだね」 ゆっくりと、宥めるように柔らかい髪を梳くと、ゆきこは稔麿の背中に腕を回した。本当に久しぶりにこうしてお互いの体温を感じることが出来た。 ゆ「…ねぇ、稔麿」 稔「ん?」 ゆ「もうすぐ、なんでしょ?会合…」 稔「うん。明後日だよ」 ゆ「そっ、か…」 どんなに嫌でも、その日はきてしまう。もう、目の前までその日が迫ってる。 ゆ「稔麿、その日…私も連れて行って…」 稔「ゆきこ…それは…」 ゆ「駄目だって分かってる!…でも、ごめん、迷惑掛けて…」 稔「分かった。良いよ…。そのかわり、ちゃんと刀を持ってきて男装すること。分かった?」 ゆ「うん、ありがとう…」 もう、時間がない。例え歴史が変わったとしても、私は稔麿を守る。 .
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