―始まった生活―

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ゆきこを抱き上げて自室に運んで、そっと畳に下ろし、濡れた髪、身体を手拭いで拭いていく。 その間、ゆきこはずっと目を瞑っていた。そして、ゆきこは少し震えた冷たい小さな手で、総司の手を包んだ。 「…確かに私は、沖田さんのことなんて全然知りません。でも、心配なんです…たまに、寂しそうな目をして返り血がついた羽織りを見てて…そんな沖田さん見てたら…ほっとくなんて出来なくて、心配したら…駄目ですか?私に関わるのは嫌ですか?」 そう言われて、総司は衝動的にゆきこを抱き締めた。きっと情けない顔をしているから、そんな顔を見せたくなかった。 「駄目じゃないです…先程はすいませんでした。あなたは悪くないのに…八つ当たりしてしまいました…ゆきこさん、私は人を簡単に斬り捨てます…血の匂いが染み付いた私に触れられることに耐えられますか?」 「…私は、あなたの手が好きですよ…?」 「…逃げたいと…思う時があるんです…私がしてきた事も、全て忘れて逃げたいと思う時があります…」 「…逃げるのは、悪い事ですか?それに沖田さんは今、逃げてないじゃないですか…」 「…でも」 「大丈夫ですよ。沖田さん、私は沖田さんの味方ですから、何も心配することなんてありません」 「ゆきこさん…」 「私は、あなたの帰る場所になりたいです。安心して帰って来れる、そんな存在になりたいです」 「ッ!!…お願いします…」 「はい」 ただ、この優しい少女を傷付けたと言う罪悪感と、この居心地のいい空間がずっと続けばいい。そう思いながら、ゆきこをきつく抱き締めた。 .
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