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布が濡れて肌に張り付いてる。気持ち悪い感触にゆきこは寝間着を脱いで布を一枚、身体に巻き付けて湯処に入った。
入ると総司がゆきこに背中を向けている状態で浸かっていた。総司は首だけで振り返り微笑んだ。
「…入らないんですか?」
「は、入りますっ…」
お湯に入ると少し熱かったが、少し冷えた身体には丁度良かった。総司とは離れ過ぎず、近すぎずという位置で止まった。
「ゆきこさん…近寄っても平気ですか?」
「ほぇ?…あ…大丈夫、です」
総司はそっと近寄り、後ろから抱き締められた。肌と肌が合わさりお互いの体温が分かる。総司は顔をゆきこの肩口に乗せた。
「…本当に、ごめんなさい。それと、ありがとうございます」
「…わ、私は何も…」
「感謝しています。私は、あなたが思うように強くはありません…それでも、傍に居てくれるんですか?」
「はい。あ、後一つだけ言わせて下さい」
「なんですか?」
ゆきこは後ろを振り返り総司と目を合わせた。総司の全てを理解することは、まだ無理かもしれない。だが、少しくらいなら分かれる。
「私は、沖田さんを強い人だとは思っていませんよ?」
「えっ?」
「優しい人だと、思っています…」
ゆきこの言葉に、少しだけ心が軽くなったように感じた。総司はゆきこをギュッと抱き締めた。
「沖田さん?」
「全く…あなたには適いませんね…」
「?」
顔を上げると総司が微笑んで何時もの様に頭を撫でてくれた。ゆきこは気持ち良さそうに目を細めた。
「私は先に出ますね?ゆきこさんはゆっくりと浸かっていて下さい」
そう言って総司は湯処から出て行った。ゆきこも、浸かってはいたが、すぐに逆上せそうになったので上がることにした。
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