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ゆきこは心地よい温もりに誘われるように目を開けた。目の前には、程良く筋肉がついた胸板があり、目を上に向けたら総司の整った顔があった。
「っ~~~!?」
「ゆ…きこ、さん?」
声にならない叫びを上げると、総司がゆっくりと目蓋を押し上げた。寝ぼけてているのか、総司の目は虚ろだった。
「はい。お早うございます」
「…まだ、早いですよ…」
「え!?いやいや起きて下さい!!」
「…うるさいですよ」
ゆきこは深く抱き締められた。目の前には総司の胸板、トク、トクと鼓動が聞こえる。
「…いい子ですから…」
総司にゆっくりと髪を撫でられると、ゆきこはその心地よさに勝てず、うとうととしていると部屋の外からドタバタと足音が聞こえてきた。
そして、バンッと部屋の襖が開いた。
「総司ーー!!起きてるかーー!!」
部屋の中に左之、新八、平助が入ってきた。幸いにもゆきこは総司の体と布団の中にいるため見えなくなっているらしい。
「総司ー!!起きろって!!」
「起きろーー!!ってええッ!?」
平助が驚きの声をあげた。ゆきこは恥ずかしさから総司の胸板に顔をうずめた。総司はゆきこの頭を撫でてから起き上がった。
「全く…うるさいですねぇ…」
「なっなななっ!?」
平助と新八は顔を真っ赤にして総司を指差した。そんな中、左之だけ平然としていた。
「おっお前等…いつの間にッ!?」
「ちっ違っんぐ!?」
弁解しようとゆきこが口を開くと、総司に口を塞がれた。見るとただ微笑んでいた。
「…何のようですか?」
「いや、だからお前等いつの間「何のようですか」…」
総司は新八の言葉を遮って、笑顔で首を傾げた。すると、新八は黙ってしまった。変わりに平助が口を開いた。
「いや…総司が朝稽古来ないから、呼びに来たんだ!」
「でも、邪魔だったみたいだな」
「邪魔して悪かっ「行きますよ?」…へっ?」
またも総司は言葉を遮ってにこやかに言った。総司は立ち上がって微笑んだ。
そして三人に近寄ってボソッと何かを呟いた。三人の顔色は見る見るうちに真っ青になった。
「じゃあ行きましょうか」
総司は着物を持って、三人を連れて部屋から出て行った。
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