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三人は道場の前で立ち止まった。中からは隊士達の声と激しくぶつかりあう音が聞こえてくる。三人は総司から発せられる冷たい空気に脅えていた。
「あなた達は非常に面白い事をして下さいましたね。全く迷惑にも程がありますよ」
「す…すまん」
「だっ、だってょ…あんな事になってるなんて思わないじゃん…」
「…あれ位で真っ赤になるんでしたら平助君は一生、左之さんとか土方さんとかには適わないませんよね」
「なっ!?あっ…赤くなってなんかねぇよ!!なっ左之さん!?」
「…いや、赤かっただろ」
総司の言葉に反論する平助だが、顔が真っ赤に染まっているため、説得力は皆無だった。まだまだお子ちゃまな平助に、一番大人な左之は確かにと頷いた。
「兎に角、今回は忠告だけしておきます」
「忠告?」
「まず一つ、今回のように声も掛けずにいきなり部屋に入って来たらそれ相応の覚悟をして下さい。次に、もしゆきこさんを傷つけた場合、身の回りに注意して下さい」
「もっ、もしそれを破ったらどうなる?」
「さぁ…?」
総司の言葉に三人は何も言えなくなった。総司は昔から穏やかな見かけと物腰とは裏腹に、やることはえげつないのだ。
「まぁ、今日は初めてなので一つは許してあげましょう」
「本当か!?ありがとな!」
「ちょっと待て総司」
「はい?」
「一つは許すって…もう一つは?」
言葉の意味を良く考えて、左之は気付きたくないことを気が付いてしまった。いや、気付かないほうがおかしいのだ。
「許すわけないじゃないですか」
何言ってんですか。と、言外に伝えるように微笑んだ総司に気が付かなかった二人…新八と平助は驚きの声を上げた。
「え!?」
「今日は誰か一人でいいですよ。誰にしますか?」
三人は総司の一言に固まった。総司はルンルンと鼻歌でも歌い出しそうに微笑んでいる
「あ!自分の隊の人でも結構ですよ?私は着替えて来るので」
固まる三人を残して、総司は着替えに行った。総司が着替え終わり道場に入ると、隊士が一斉に固まった。
「クスクス…どうしたのですか?続けなさい」
総司の言葉に隊士は泣きそうな顔をして練習を再開した。奥の方にいる三人を見つけて総司は置いてあった竹刀を持って近寄っていった。
「決まりましたか?」
「…ああ。隊士の奴らだ」
「了解です」
悪い。と総司の笑顔を見た三人は隊士達に心の中で謝ったのだった。
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