―始まった生活―

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総司は持っていた竹刀で、床をドンッと叩くと、道場が静まり返った。怯えた表情で振り返った隊士達を見て、総司はにっこりと微笑んだ。 「では、今から久しぶりに私が稽古をつけようと思います」 総司の一言で道場に静寂が訪れた。隊士達、特に一番組は総司の恐ろしさを知っているため、灰になりそうだった。実際、拭けば飛びそうだと思った隊士は少なくない。 「えーと…一君、いますか?」 呼び掛けると、一が隊士達の中から出て来た。その表情が、少し引きつっているのは気のせいだろうか。 「お前が稽古に来るなんて珍しいな…」 「はは。そうですね」 「隊士達に稽古をつけるのか?」 「どっかの三人組のせいで、私とーっても機嫌が悪いんですね」 笑顔に似合わない言葉を吐き捨てながら、総司は絶望的な顔付きをしている隊士達を見回した。 「…程々にな」 「はい。それで一君にも手伝って欲しいんです」 「なんだ?」 一が首を傾げたのと同時に、道場の戸が開いた。ひょこっと顔を出したのはゆきこだった。 「…ゆきこさん?」 「あ…えっと見学しに来たんですけど…」 「あれ?朝餉の準備はいいんですか?」 「菊姉が、朝餉は作ると言うので…」 「そうですか。ではこちらへ」 ゆきこは総司の言葉に、少し小走りになりながら総司の斜め後ろに控えた。ゆきこが現れたことにより、隊士達の目に少し精気が戻った。 「此処にいて下さいね」 「はい」 「では其処の三人と一君。今から振り分けるので、朝餉が終わったら始めましょうね」 総司に言われて、一と三人は集まって話し合った。その間、隊士達は総司の稽古だけは受けたくないと手を合わせて願っていた。 「では…私の組は十番組。一君の五番組。新八さんは八番組。平助君は四番組。左之さんは一番組。今言ったことを覚えておいて下さい」 総司の稽古を受けることになった隊士達は真っ白になり、他の組長の稽古を受けられる隊士達は胸をなで下ろした。 「それでは、この組み合わせを覚えておいて下さいね?ゆきこさん、よろしければもう一度来て下さい」 「あ、はい」 「…くれぐれも逃げないで下さいね」 ぞろぞろと広間に向かう隊士達の背中に総司は冷たい殺気を込めながら言い放った言葉に、隊士達は身体を震わせた。 .
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