―父親の存在―

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目が覚めると、見慣れた古い天井が目に入った。布団に手を付いて、起き上がったゆきこは疲れたように息を吐いた。 総司が起きないうちに着替えてしまおうと、ゆきこは昨日菊に貸して貰った着物に腕を通した。 何時もより色は明るめで、普段は結ばない髪を編み込んで髪紐で結んだ。せめて隣に並んで恥ない格好がいい。鏡で最後に確認して未だに夢の中にいる総司へ歩み寄った。 「沖田さん、沖田さん起きて下さい。朝ですよ。今日は町に行くんですよね?」 呼び掛けると、総司はうっすらと目を開けた。そして、何時もの様に微笑んだ。 「随分と綺麗ですね…」 「この着物、昨日菊姉に貸して貰ったんですよ?可愛いですよね」 「…ゆきこさん。あなたもですよ」 「からかわないで下さいよ…私はもう準備出来ましたから、門の前で待ってます」 「早いですね…了解です直ぐに行きます」 ゆきこは赤くなった顔を見られないように逃げるように部屋から出て、門に向かった。 .
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