―父親の存在―

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桜舞を受け取り店を出たゆきこと総司は町中を歩き始めた。だが、あまりにも人通りが多いためゆきこは、何度も総司とはぐれそうになった。 「あ、あれ?沖田さん?」 人にぶつからないように歩くのが精一杯だったゆきこはいつの間にか総司の姿を見失っていた。 キョロキョロと辺りを見回すが、見つからない。恐怖と孤独がゆきこの胸に渦巻き始めた頃、グイッと腕を引かれた。 「見つけたっ!!」 「っ!?……沖田さん」 腕を引かれ振り返ると、そこには安心したように微笑む総司の姿があった。ゆきこもホッと息を吐いた。 「ゆきこさん。手を出して下さい」 「?はい」 総司の言う通りにゆきこは手を出すと、総司はその小さな手を握った。その瞬間、はっきりと動揺が伝わってきた。 「手を繋いでいれば、はぐれることもないでしょう。ゆきこさん?どうかしましたか?」 「な、な、何でもありません…」 俯いてしまったゆきこに首を傾げながら、総司はゆきこの手を引き歩き始めた。はぐれることはないだろうが、心臓に悪い。 「さて…もうそろそろ帰りますか?」 「そうですね。ありがとうございました」 ふにゃりと笑ったゆきこにつられるように笑顔を浮かべた総司は、ゆきこの手首に何かをつけた。 「え?何ですかこれ?」 「記念にどうぞ」 それは腕輪だった。桜色の石が埋め込まれ細かな細工が施された腕輪にゆきこは表情を綻ばせた。 「ありがとうございます」 日が暮れる頃、ゆきこと総司は屯所に帰ったのだった。ゆきこは大きな覚悟を胸に抱いて。 .
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