―父親の存在―

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ゆきこが強く強く帰りたいと願うと、意識が闇に沈んでいくような感覚に陥った。 闇。ゆきこはそれが一番恐ろしい。だが、不思議とその闇も今は怖くなかった。 完全に意識が沈む瞬間――― 「ゆきこさんっ!!」 その声にゆきこは一気に意識を引き戻された。ゆきこはぼんやりと目を開け、虚ろな目で駆け寄ってくる総司を見た。 「ごめん、なさい…約束、守れない…」 初めてゆきこが総司たちの前に現れた時のように、光に包まれた。総司は、ハッと目を見開きゆきこに手を伸ばした。 「ゆきこさん、行かないで下さいっ!!私の帰る場所になってくれるんじゃなかったんですかっ!!」 虚ろな目が、確かに揺れた。だが、光に包まれていく身体がどんどん透けていく。 ごめんなさい。その言葉が心の中を巡る。思考が上手く廻らなくなり、ゆきこは静かに目を閉じた。 「幸せ、に…なって、下さい…」 微かにゆきこが微笑んだような気がする。総司自身、何故こんなにゆきこを引き止めたいのか判らない。名前しか知らない、生まれた場所も、家族も何も知らない。 「何故ですかっ!!此処を嫌いになってしまいましたかっ!?必ず守りますから!!だから、行かないで下さいっ!!」 こんなに焦っている総司の声を初めて聞いた。目を開けようと思っても、開かなかった。総司には、一番助けて貰った。 「あ、りがとう…ございました…」 「ゆきこさんッ!!」 ゆきことの距離を一気に縮め、総司は手を伸ばした。 ―――だが、ゆきこに触れる瞬間、ゆきこは光と共に消えた。 .
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