―現代―

3/8
前へ
/592ページ
次へ
いつもなら何も考えずに、唯一真剣に取り組むことの出来る部活にも、ゆきこは集中出来なかった。 「ゆきこ…大丈夫?」 「え?あぁ、うん。平気」 ゆきこは、我に返り素振りをする後輩たちを見つめた。大事な時期なのだから、集中しなければならない。 「無理しないでね?」 「大丈夫だって」 ヒラヒラと手を振りながら、ゆきこは微笑んだ。みきはまだ心配していたが、ゆきこはわざと気付かないふりをした。 「そうだ。ゆきこ、もうそろそろ新しい部長候補を探しておけって言ってた」 「そっか…もうそんな時期なんだ」 いつの間にか、母が亡くなってから随分と時が経ってしまった。ゆきこはコクリと頷き、もう一度後輩たちに視線を戻した。 「後少しで、引退かぁ…早いね」 「そうだね」 ゆきこは、素振りをしている一人の後輩を呼んだ。その後輩は竹刀を下ろし、ゆきこに駆け寄った。 「何ですか?」 「私たちさ、もう少しで引退だから…新しい部長候補、見つけないといけないんだ」 「そう、ですね」 「考えておいてくれないかな?私は部長候補として君を推す」 「へっ!?」 突然の宣言に、その後輩は目に見えて狼狽え、ゆきこはそんな後輩を見てケラケラと笑った。 「みんなー!!構えっ!!蹲踞、納め。これで部活終わります。みんなお疲れ様」 ゆきこの前に後輩たちが整列して、朝練が終了した。だがその時、ゆきこは突然頭が痛くなった。 「ゆきこ?どうしたの?」 「私…保健室行ってから、教室行く…先生に言っておいて…?」 「う、うん。わかった」 みきの心配そうな声を聞きながら、ゆきこは頭を抑えながら保健室に急いだ。 .
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1416人が本棚に入れています
本棚に追加