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暫くすると頭痛も収まり、ゆきこは保健室に置かれていた机に置き手紙を残し、教室に向かった。
「ゆきこっ!!大丈夫なのっ!?」
丁度休み時間だったようで、教室に入るとみきが駆け寄って来た。
「うん。大丈夫」
自分の席に座り、ゆきこは心配そうに見つめるみきに苦笑いを浮かべた。みきはゆきこの事情を知っているため余計に心配してしまうのかもしれない。
「今日は部活休んだら?」
「え?大丈夫だよ」
あっという間に昼休みになり、ゆきこは教室でみきとお弁当を食べていた。まだ、心配のようだ。
「ゆきこはいつもそう言って無理するんだもん…今日は休みなよ」
「はいはい…分かったよ」
玉子焼きを箸で食べやすい大きさに切りながらゆきこは頷いた。ゆきこも今は早く家に帰りたかった。
声が、聞こえるのだ。頭の奥底から、優しく暖かい懐かしい声が、呼んでいるのだゆきこの名を。
「ゆきこ?」
「何でもないよ」
はぁ…と、溜め息をつきゆきこはお弁当をしまい立ち上がった。みきはキョトンとゆきこを見上げた。
「やっぱりもう帰るよ…」
「だったら、家の者を呼んで送らせるよ」
「みき」
ゆきこの厳しい声にみきは固まった。みきの家は一般的に言えばお金持ちだ。父は社長、母はその秘書。だったら、何故こんな普通な学校にいるかというとゆきこが原因と言ってもいい。
「だ、って…」
「私はそういうことは嫌いだって言ったよね?歩いて帰るからいいよ。ありがとう」
ゆきこはさっさと教科書を鞄に入れ、教室を出て行ってしまった。
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